倫理

ドキュメンタリー出演者のその後の証言

偶然見つけた記事です。少女時代にネットフリックスのドキュメンタリー作品に出演していた女性が、大人になってそのことの影響の深さについて語っています。女性の父親は、妻(彼女の母親)を殺した事件の加害者として有罪判決を受けました。作品は大ヒット…

【震災】「逃げろ」「逃げるな」ではなく

被災状況の深刻さ、原発の厳しい状況が報道される中で、東日本(福島はもちろん、被災した東北地方、北関東、東京中心部など)から、西日本へ避難している人たちが増えてきました。 まず、私たちすべての人に、いつでもどこへでも、避難する自由があります。…

船には乗っていません、という話。

ハーバード大学のサンデル教授の倫理学の授業を紹介する番組*1が評判になっている。番組では、「究極の選択」を学生につきつけ、そこから合理的判断を導くように議論させる方式の授業が放映されているようだ。私は、番組自体は実際に視聴していないが、こう…

間抜けな狐はブドウを食べる

イソップ童話に「狐と葡萄」というお話がある。のどが渇いた狐が葡萄をみつける。ところが高い所にあって、手が入らない。すると狐は「あの葡萄はすっぱくて食べられたもんじゃないよ」と言って立ち去った。これは、フロイトが防衛機制の説明に引用するエピ…

森岡正博の臓器移植法改案に対するコメント

昨日(7月7日)、参議院厚生労働委員会で臓器移植法改案に関する参考人聴取・質疑が行われました。そこで、森岡正博が発言しています。*1 私もネット中継を観ましたが、非常に重要な情報が示されています。本来、議論の前提となる情報ですが、マスメディアで…

生死を考える際、個別/普遍の連関をどう思考するか

下の記事にid:mojimojiさんからお返事をいただいた。 mojimoji「個別的/具体的な思考が抽象的思考を支える」 以下の部分を取り上げる。 もう一つ言っておきますと、ここでの「抽象的な」あるいは「普遍的な」意味での「殺すな」は、どのようにして出てきた…

奥歯の痛みとしての民族主義

彼は、自己紹介で「朝鮮人です」と名乗った。参加者の半数が在日コリアンであり、後の半数が日本人であるような、学生の研究会の場だった。彼はかつて学生時代に民族団体の活動家であった。「朝鮮人です」という言葉が、事実を述べるものではなく、パフォー…

個別的に「人を殺すこと」を思考することは可能か

id:mojimojiさんから、「「殺すな!」の空虚さについて」へのお返事をいただいた。 mojimoji「「殺さないでくれ」の意味」 後半部分から読んでいく。 ちなみに、「イスラエル人が殺されることを、同胞が殺されることとみなしている」は、まちがってはいませ…

「殺すな!」の空虚さについて

パレスチナの問題について、id:mojimojiさんとid:hokusyuさんが議論している。 hokusyu「「決断」の暴力に抗する」 mojimoji「「決断」の暴力に抗するからこそ、こう述べている」 そこで、hokusyuさんが普遍的理念の空虚さについて次のように指摘している。 …

個人として、でいいのか?

村上春樹のインタビューが「文藝春秋」に掲載された。文藝春秋 2009年 04月号 [雑誌]出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/03/10メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (17件) を見るエルサレムに行くまでの葛藤や、当日の様子などが…

なんで「これは性暴力だ」と思うのか2

性暴力被害が現れる3つの関係性 (1)空間的関係1(加害者―被害者関係) 性暴力という事態が起きたそのときに、「加害者―被害者」という関係が生まれる。お互いがそれを暴力だと認知しているかどうかは、加害者となった人も、被害者となった人も、わからない…

なんで「これは性暴力だ」と思うのか

以下、これもメモです。 私が、ずっと疑問に思っていることのうちの一つは、「性暴力で傷つく度合いは、個人差が異様に大きい」ということだ。 一般的には、顔見知りよりも見ず知らずの他人から受けたレイプのほうが、タッチやオーラルセックスよりも挿入さ…

「生き方」の問題と、「生き延びること」の問題

以下、完全にメモ代わりです。 「よく生きるとは何か」を問うのが、倫理である、というような考え方がある。それに対して、「ただ生きるだけでよい」というような考え方がある。*1 性暴力被害者の中に、「サバイバー」を名乗る人たちがいる。その中では、「…

細谷実「美醜としての身体――美醜評価のまなざしの中で生きる」

これは、金井淑子編「身体とアイデンティティ・トラブル―ジェンダー/セックスの二元論を超えて」に収録された短い文章である。身体とアイデンティティ・トラブル作者: 金井淑子出版社/メーカー: 明石書店発売日: 2008/05/30メディア: 単行本購入: 1人 クリッ…

役立たずの思想家たち

『思想地図』発刊記念シンポジウムのレポート記事を読んだ。なんていうか複雑な気持ちがする。たとえば、宮台さんはエリート主義をずっと推している。しかし、エリートって、いったい誰なのだ?エリート主義が機能するには、エリートたちが外在しないといけ…

「赦し」の残酷さ

ある方にご紹介いただいて、「赦し」について聖書で述べられている箇所を読んだ。「マタイの福音書」18章21-35節である。 その時、ペテロが、イエスのそばに来て尋ねました。「先生。友だちが私に罪を犯した場合、何回くらいまで赦してやればいいでしょうか…

黙りたまえ、それが望みならば

前の記事にトラックバックをいただいている。 語りへの暴力的な欲望 当事者が語ること・当事者以外が語ることについては、ブログでも何度も書いているので、自説は割愛する。 その上で、考えたことを列記しておく。 1 苦痛を語ることについて (1)他者の苦…

25歳の加害者

秋葉原連続殺傷事件の事件は、私はインターネットの速報や、新聞記事でしか知らない。だから、その概観すらつかめていない。ただ、私が衝撃を受けたのは、加害者が25歳であったことだ。おそらく私と同年生まれだ。 初めて、この衝撃を受けたのは、1997年であ…

倫理の教え方

id:toledさん経由で、トリアージをめぐって議論が起きている。 id:fuku33さんは、経営学の授業*1で、トリアージについてこのように述べた。 また、別の回に、資源の有限性がその合目的的な最適配分を促し、戦略性やリーダーシップや組織内の規範意識も意思決…

「もし〜だったら」のむなしさと力

sk-44さんから、私の「死刑を求めなくてよい社会を」という記事に対し、応答をいただいた。 sk-44「human being(反省と償いと、赦し)」『地を這う難破船』 全体を論じることはできないが、「赦し」について触れている一部分だけに、応答しておく。 「自身…

死刑判決の妥当性ではなく

光市母子強姦殺人事件の被告に、死刑判決が下った。上告するようだが、予想通りはてな村では、たくさんの記事が書かれている。私は、前の記事の文脈もあって、この件については、時間をかけて考えようと思っている。 たとえば、素朴に率直にこのような気持ち…

正しいことと、それがどうでもよくなること

まとまらないが、メモ代わりに。 私はPCを大事にしているので、たいてい正しいことを言う。たとえば、「レイプをしてはいけない」と言う。間違っても「男はそういうもんだから」とか「欲望は抑えきれないから仕方がない」とかは、言わない。そういう寛大で理…

「動物的としての政治」を構想する机上派と現場派というラベル

id:sugitasyunsukeさんのところ経由で、東さんの政治的立場の表明を読んだ。 「シンポに向けてのメモ」『東浩紀の渦状言論』 「シンポに向けてのメモ2」『東浩紀の渦状言論』 簡単に言えば、「人間的な高度なコミュニケーションとしての政治ではなく、『動…

まだ終わりではない、という認識

id:FUKAMACHIさんの記事が、話題になっているようだ。FUKAMACHIさんは、一青 窈「受け入れて」を偽善であると批判した。この記事を受けて、多くのコメントが寄せられ、その中にはFUKAMACHIさんの人格やキャリアを否定するような文言もあった。 その後、FUKAM…

決断主義と非政治的人間の間にとどまる

id:mojimojiさんが、誰に宛てたでもないであろう記事に応答する。たぶん、賛同している部分もあれば、批判している部分もあるが、逐一あげることはしなかった。

岡真理「記憶/物語」

私にとって岡真理は鬼門である。なぜなら、私の書きたいものは、たいてい岡さんがずっと上手に書いているからだ。いつも読みながら「どうか、私の考えていることを岡さんが書いていませんように」と祈っている。 と言いつつ、私と岡さんは決定的に、感覚が違…

姥捨て山の尾根を歩く

ある主婦が私に囁いた。 「私、ボケたおばあちゃんを施設に入れてあげたかったの。」 在宅介護で、看取った女性は私に、近所の目を避けるように小声で言った。 私自身は、姥捨山問題とは、端的に「嘘つき・欺瞞」の問題だと考えている。すなわち、「出来るの…