「些細である」からこそ大事なセクハラの話

セクシュアル・ハラスメントという言葉は、1989年に福岡地裁で始まった訴訟(通称:福岡セクハラ訴訟)をきっかけに、広く知られるようになった。この裁判で弁護団は、福岡の小規模の出版社に勤務する女性が、性的な中傷を受けたことを、性差別によるもので…

WANのトランス差別を含む文章掲載について

WAN(Women's Action Network)に、石上卯乃氏によるトランス差別を含む文章が掲載された件で、ここのところネットで議論になっていました。ふぇみ・ぜみ×トランスライツ勉強会は、WANに対して公開質問状を出し、以下のことを指摘しています。 石上氏による当…

男性から男性へ語ること

ナインティナインの岡村隆史さんの発言が大炎上している。岡村さんは2020年4月27日のラジオ番組の「オールナイトニッポン」で以下のように発言した。 苦しい状態がずっと続きますから、コロナ明けたら、なかなかのかわいい人が短期間ですけれども、美人さん…

ネット上のフェミニズムについて

思わぬ形で炎上してしまったので、何度かこれまで書いてきたネット上のフェミニズムについて、アップデート版をメモがわりに書いておく。 私はネット上のフェミニズムを切り離さない。 ネット上で一部のフェミニストが「ツイフェミ」「ネットフェミ」「ミサ…

恋愛・結婚しないのは「権利の行使」なのか?

シロクマ(id:p_shirokuma)さんの以下のような記事がネット上で話題になっている。 「恋愛も結婚もしなくなった日本は未曾有の先進国」 https://p-shirokuma.hatenadiary.com/entry/20190624/1561360692 シロクマさんによれば、日本で男女が結婚・恋愛をしな…

「男」に「男」は救えるか?

ここのところ、はてなの匿名ダイアリーで、(シスヘテロの)男性と男性の関係についての、男性の書き手による記事が次々と公開されて、ブックマークを集めている。 これまでネット上では「弱者男性」を名乗る人たちが、(経済力のある)女性は(経済力のない…

性暴力・DV被害の実態調査の記事の追記

先日、公開した性暴力・DV被害の実態調査について書いた記事が、予想以上にアクセスを集めてしまいました。該当記事は以下です。 「日本社会における「女性に対する暴力」は少ないのか?」 http://d.hatena.ne.jp/font-da/20181028/1540696942 私の記事はこ…

日本社会における「女性に対する暴力」は少ないのか?

追記: 以下のサイトで最初は「ジェンダー社会学者」という肩書きになっていたのですが、「フェミニスト」にご変更いただきました。 日本では女性への暴力は少ないと言う調査結果に困惑するフェミニスト http://www.anlyznews.com/2018/10/blog-post_29.html …

性暴力被害者の告発をどう受け止めるのか?

この記事は三部構成になっています。関心に即してお読みください。 (1)はあちゅうさんの性暴力の告発 (2)はあちゅうさんに対する批判 (3)告発した被害者と支援者はどのような状況に置かれるか (1) はあちゅうさんの性暴力の告発 いま、インターネット上で性…

警察官が被害者に「処女ですか?」と聞く必要はない

インターネット上で、警察官が性暴力被害者に「処女ですか?」と聞くのは、「処女の被害であれば強姦致傷になるからだ」という流言が飛び交っている。警察のセクシュアルハラスメント行為を正当化する言説であるので、訂正を求めたい。 以下で(1)「強姦」と…

「成人向け同人小説」を研究対象にする場合の問題について【追記あり】

id:lisagasuさんからブクマコメ*1でコールをいただいていたので、「成人向け同人小説」を研究対象にする場合の問題について、簡単に私の意見を述べる。これは、人工知能学会に掲載された論文において、「成人向け同人小説」を作者に無断で分析対象にし、その…

小池一夫氏の二次加害発言について

昨日からネットで話題になっているのが、小池一夫氏の二次加害発言である。小池さんは「子連れ狼」などの漫画原作で有名であり、ツイッターでも28万人以上のフォロワーを持つ。非常にネット上で発言力のある人物だ。 その小池さんがある事件の被害者に対し、…

ジョージ・ミラー「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

あんまりにも評判がいいので「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観に行ってきた。ネットではフェミニズム映画かどうかが議論になっているようだが、私はこの作品は男性監督の「男の夢みるフェミニズム」の映画だと思った。抑圧され奴隷化された男性が、…

日本「性とこころ」関連問題学会 第7回学術研究大会

「性とこころ」関連問題学会で、一般演題で報告します。内容は、性暴力事例における修復的司法についてで、心理セラピストが主導して展開しているプログラムに焦点を当てます。 性暴力事例は、長らく修復的司法でも禁忌とされてきました。特にセラピストから…

性暴力に関する司法制度についての入門書

私は法学専攻ではないので、いつも司法制度について勉強するのには苦労しています。判例集なども見ますが、性暴力事例は残念ながら、あくまでも「法律の専門家」によって書かれており、「性暴力の専門家」がコメントしているものは稀です。 同じく、司法に関…

「弱者男性」は何を望むのか?

数年前から「弱者男性」という言葉がインターネット上で流通するようになっている。定義は明確ではないが、マイノリティ属性(「障害者」「セクシュアルマイノリティ」「生活困窮者」「民族的少数者」など)を持たないが、不安や困難を抱える男性のことだろ…

リベンジポルノについて

リベンジポルノで逮捕者が出て、事件報道がなされています。リベンジポルノとは、過去に撮った性的な写真や動画を、相手への嫌がらせ行為として公開することです。犯罪抑止の言説がこれから出てくると思いますので、先に書いておこうと思います。以下に、本…

やまじえびね「ナイト・ワーカー」

ナイト・ワーカー (ビームコミックス)作者: やまじえびね出版社/メーカー: KADOKAWA / エンターブレイン発売日: 2015/04/25メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る この単行本の5分の4は「微熱のような」という作品で占められている。文学少女…

バラの花束を贈ることも暴力になる

下の記事について、id:zeromoon0さん*1からお返事があった。 「お手紙」 http://zeromoon0.hatenablog.jp/entry/2015/03/23/142325 前半では、私の主張に賛同してくださり、表現が不適切であったことを陳謝してくださった。誠実な対応をしていただいた。 後…

ネトフェミだったら何なの?

ここのところ、ネットでは「久谷女子同人誌の件*1」と「ルミネCMの件」*2が話題になっていた。どちらも性に関するトラブルで、女性が告発している。 それらの出来事は、あるときは「フェミニストがわめいている」と言われ、あるときは「フェミニストはこの件…

テレビドラマ「女はそれを許さない」

何気なくネットでオンデマンド放送を見てから、すっかり「女はそれを許さない」に夢中になってしまった。(まだ二回しか放映されていない) 「女はそれを許さない」 http://www.tbs.co.jp/yurusanai2014/ 41歳の海老沢(寺島しのぶ)は強引な裏取引で勝訴を…

被害者支援者の抱える問題(人身取引の場合)

先日行われたストーカー問題研究会*1で、久保田 薫「性暴力支援の現場から−人身取引被害者支援の現状と課題−」という報告がありました。 久保田さんはフィリピンで人身取引被害者支援の活動にかかわった後、帰国して日本で活動を継続しています。今はレイプ…

近親間での性暴力について

数日、アクセスが増えているので確認してみたら、別のブログで私のブクマコメントが紹介されていたらしい。 「近親相姦の問題は同性婚の問題とパラレルではない」 http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20140806/1407322990 上の記事についてではなく、自分の以下の…

内閣府「「性犯罪被害者支援に関する調査研究」報告書

今年の六月付けの「性犯罪被害者支援に関する調査研究」報告書がネットにPDFであがっているようだ。 「性犯罪被害者支援に関する調査研究」報告書 http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h26_seihanzai_houkoku.pdf ワンストップセンターの設置の…

自治体議会における性差別体験アンケート

フェミニスト議員連盟が「自治体議会における性差別体験アンケート」をするそうです。 都議会のセクハラヤジ問題は、個人的なことではなく、女性議員全体に向けられた人権侵害行為です。今回のことは、氷山の一角に過ぎず、多くの議会で、女性議員はさまざま…

金井純一監督「ゆるせない、逢いたい」上映会・アフタートーク報告

大変遅くなりましたが、映画「ゆるせない、逢いたい」(金井純一監督)上映会・アフタートーク*1の報告をアップいたします。最下部には、PDFファイルを添付しており、会場からの声を個人を特定しない形で掲載しています。 私の個人的な感想としては、商業映…

自閉症スペクトラムの人たちの性〜セクシュアリティ〜について

知人よりお知らせいただきました*1。 『 TEACCH コラボレーションセミナー 2014 』 日 時:平成26年2月15日(土)・16日(日) 場 所:京都染織会館 シルクホール(京都市下京区四条通室町東入) テーマ:「自閉症スペクトラムの人たちの性〜セクシュ…

性暴力加害者の心理

性犯罪をおかして、逮捕され服役した人の手記が掲載されています。加害者として経験を話す人は多くないので、参考に挙げておきます。(加害についても触れられているので、リンク先の閲覧にご注意ください) 「【追記あり】元露出狂が綴る防犯対策」 http://…

河野さんからのお返事

先日の記事について、河野美代子さんから、お返事いただきました。 まず、河野さんはフェミニストから嫌がらせを受けた経験があるということでした。 20年前、「さらば、悲しみの性」という本を出版し、期せずしてベストセラーになり、話題となった。あるフ…

「風俗で働く」ことを怒ることは百害あって一利なし

目次 1.「風俗で働く」若い女性に説教する婦人科医 2.風俗で働く若者への説教の弊害(社会的な問題) 3.自分を大切にできないこと(心理的な問題) 4.支援者こそが学ばなければならない 5.情報をアップデートすること 1.「風俗で働く」若い女性…