アジア環境哲学ネットワーク・オンラインシンポジウムのお知らせ

 2022年6月17日・18日に、アジア環境哲学ネットワークの第一回のオンラインシンポジウムが開催されます。第一言語は英語です。無料ですが事前に登録が必要です。

 インドから日本まで十数カ国から20名以上の多様な報告者が登壇します。ワークショップでは、「アジアにおける自然とはなにか」と「アジアにおけるナショナリズムと環境哲学」、今後のプロジェクトの展望について議論します。分科会は「哲学的伝統」「政策」「先住民の知恵」「映画」「文学」でそれぞれの報告者がプレゼンテーションを行います。

 ご関心をお持ちのかたは、以下のリンク先からご登録ください。詳しいプログラムも掲載されています。

asiaenviphilo.com

 英語版は以下です。

asiaenviphilo.com

水俣についてのイベントのお知らせ

 熊本市の新聞博物館では、6月10日まで「写真家が見た水俣」の展示が行われています。プロジェクトの代表は、写真家の芥川仁さんです。貴重な写真を見る機会になっています。

kumanichi.com

 また、6月10日までトークイベントの録画が公開されています。YouTubeで無料で視聴できます。

 www.youtube.com

 さらに、6月11日には水俣・熊本みらい基金による「緒方正人さん・斎藤幸平さんによるオンライン講演&トークショー」がオンラインで開催されます。無料ですが事前に登録が必要です

 

minamata-fund.org

近況

 週刊新潮の書評欄で、中江有里さんが拙著を取り上げてくださっています。ありがとうございます。

www.bookbang.jp

 また、京都新聞にもインタビュー記事が出ました。もとからよく知っている広瀬一隆さんが聞き手だったので、自分としてはいつもより踏み込んだことを話になっていると思います。

 これで取材はひととおり終わりました。なんだか思ったより大変でした。被害体験についていろいろと尋ねられると、過去に引っ張られる感じがします。それに抵抗しようと、やたら前向きに今の仕事を頑張ろうとするので、過去と未来で綱引きをしている状態になりました。いつもより疲れやすくなってしまいました。そのうえ、取材によっては「言ってないこと」が原稿に書いてあると感じることもありました。「かわいそうな被害者が社会を変えるために立ち上がる」というストーリーに押し込められたようで、げんなりしました。私の本は、そういう第三者の態度を批判しているだけに、「せっかく書いたのになにも伝わらなかった」という虚無感がありました。さすがに「ウゲっ」となる体験でした。他方、私は研究者でもあり、インタビューをする側にもなるので「他山の石」にしたいと思っています。

 一部のジャーナリストが「かわいそうな被害者」ばかりを取り上げたがる件は、いまの社会で起きていることにもつながっているとは思います。SWASHからAV新法についての共同声明が出ています。詳しくこの件について書きませんが、以下に尽きると思います。

したがって、障害や性被害経験を有するか否かなど、個々のアイデンティティや経験を就労の際の条件とすることは、人権侵害であり、決して許されません。個々人は自分の人生を自分で選択する権利を有しています。その権利が侵害され被害にあったり差別経験を持ったからといって、その力を、その権利を失ったわけではありません。  私たちはそれぞれの経験を生き抜き、ここに存在しています。 そして、自らの人生を自分で選ぶなかで人生の過程に危険が伴う時には、その危険から身を守るための権利を有しており、それを主張することが正当なことだと確信しています  

swashweb.net

 まずは声を聴くことです。あんなに性暴力被害者に対して「声をあげてほしい」と言うのに、実際に性産業で働いている人たちの声を聴かないという姿勢を示す支援者は、ダブルスタンダードに陥っているのだと思います。10年前に、すでに性産業で働く性暴力被害者に対する調査は実施されました。そのなかでも、当事者の声は多様であり、一つにはまとまりません。

font-da.hatenablog.jp

 聞き心地の良い、自分の価値と一致する声だけを「本当の当事者の声」だとすることに私は抵抗してきたし、これからも一貫してその態度を取ると思います。ときには、私には受け入れ難い話をする当事者もいます。私に対して不当だと思うことを言う当事者もいます。でも、それは「当事者の声」でしかありません。すべての当事者の声を「なかったこと」にしないでほしいと思っています。

**追記

 今気づきましたが、一部のフェミニストの法律家、法学者の人たちも、AV成立を求めて声明を出しています。セックスワークについての考えや、賛同理由は私とは違いますが、結論は一致しているようです。私は性の問題に対する法の力の働きを強めることには慎重な立場ですが、立法では専門家による議論が不可欠ですので、このような動きが出たことはよかったと思っています。

sites.google.com

 

 

近況

 朝日新聞にロングインタビュー記事が出ました。拙著を取り上げていただき、ありがとうございます。

 ネットメディアModern Timesの、宮崎駿のシリーズは第二回が公開されました。今回はナウシカのなかの巨神兵に焦点を当てています。宮崎の考えるアニミズムの射程には、動植物だけではなく人間の作った機械も含まれるという指摘をしています。

www.moderntimes.tv

 やっとベルギーでの住民カードも更新され、滞在も残り8ヶ月です。これから、学会シーズンに突入するのですが、あれこれ首を突っ込んでいるうちに膨大な仕事を抱え込み、作業のやりくりにアタフタしています。相変わらず英語は下手くそですが、そうも言ってられないくらいの速度でものごとを進んでいて、怪しい会話とメールで連絡しながら、こっちで研究を進めています。とりあえず、夏まではなんとか頑張りたいです*1

*1:理由はわかりませんが、はてなブックマークのピックアップ記事になってしまったようで、アクセス数が増えそうなのでシンプルな内容に差し替えました。

近況

 先月の週刊金曜日3/25号に、太田明日香さんが書評を書いてくださっています*1。「個別的な体験を描きながら、性暴力の総体を描きだす」という見出しの記事で、とても嬉しい紹介のされ方でした。

 パラパラ読んでいると、岩波書店の「世界」の売上が2年連続で伸びているとの記事がありました。私も2020年3月号でインタビューの記事を書かせてもらいました。その後、インタビューしたナヤ・アービターさんの訃報を聞き、お話を伺う最後の機会だったのだなあ、と寂しく、でもありがたい気持ちになりました。若い層の読者が増えているそうで、なによりです。

 私も、「週刊金曜日」にせよ、「世界」にせよ、原稿をご依頼いただくのは30-40代の同世代の編集者が多いです。そんな時代なんだなあと思います。ちなみに、私がいただく原稿依頼の9割くらいは、自作のウェブサイトのメールフォームから受け取っています。それも時代だなあ、と思います。聞くところによると、編集者とコネを作るためのコミュニティなどが東京にはあるらしいのですが、関西に住んでいましたし、そのあとベルギーに引っ越したので、私の中では都市伝説のまま終わりました。

orikakom.com

 知人から教えてもらったのですが、先日、10年前の亀岡交通事件についてのシンポジウムが、被害者遺族を招いて開催されました。タイトルは「絶望とともに歩んだ先に」です。

www.kuas.ac.jp

 ご遺族の10年間の道のり、そして被害者支援と加害者更生についての率直な意見交換が行われたと聞いています。「被害者の求める助け」と「実際の支援制度」にずれがあることや、加害者に対する葛藤、それでもなぜ更生を求めるのかなどの、話題が出たとのことでした。これまで被害者支援と加害者支援の断絶はとても深く、ときには被害者がどちらかの立場を支持することで引き裂かれることもありました。私は、シンポジウムの話を聞きながら、新しい一歩が踏み出されたのではないかと、思いました。個人的には、生き残った当事者は立ち止まっていられないから、前に進まざるを得ないのだ、それを望んでも望まなくても、という想いを抱いています。

 シンポジウムを企画した京都新聞の広瀬一隆さんは、記者として10年間、ずっとご遺族の取材を続けてきました。事件の当事者の「その後」を追うことは、地方紙の大切な役割だと思います。シンポジウム後については、こんな記事が出ています。

www.kyoto-np.co.jp

 広瀬さんが、事件の取材をまとめた著書は、いま発売中です。期せずして、私の本と同時期に出版されることになりました。広瀬さんとは旧知の仲で、昔、当事者性について議論していて喧嘩になりました。相変わらず、考えも立場も違いますが、似たような話について時間をかけて、粘り強くやっている方なんじゃないかとは思います。

 これから開催のイベントのお知らせです。環境問題と修復的正義についての連続セミナーです。オンラインで無料ですが、事前に登録が必要です。英語ですし、時差があるので視聴は大変かもしれませんが、特に5月31日のブルーナ・パリの「The Art of Repair: Bridging Artistic and Restortive Responses to Environmental Harm and Ecocide」は注目です。私は参加予定です。

www.staff.universiteitleiden.nl

 また、ヨーロッパ犯罪学会の開催中に、関連企画として「Environmental Crime & Gender」が企画されています。こちらは報告者も募集中です。私は聴講者として参加予定です。

www.eur.nl

 個人的な近況としては、移民局からやっと必要な書類(Annex46)が届きました! 近日中に住民カードを更新予定です。今回は、移民局が難民の申請を優先したため、一般の滞在許可の発行は遅れたということで、それはしょうがないかな、と思いつつ……何もなくても、君たちはいつも遅れるよね、という気持ちもあります。無事に更新できるのですから、結果オーライではありますが。

*1:日本から転送してもらったのでご紹介が遅れました

近況

 大阪大学倫理学臨床哲学研究室の主催するフォーラムで、「研究者になるということ:研究者と当事者のあいだで」というオンライン講演をすることになりました。無料です。ご関心ある方は事前にご登録ください。

第7回臨床哲学フォーラム「研究者になるということ:研究者と当事者のあいだで」

日時:2022年6月1日(水)17:00-19:30(Zoom開催)

主催:大阪大学倫理学臨床哲学研究室

講師:小松原織香さん(日本学術振興会特別研究員PD・『当事者は嘘をつく』(筑摩書房、2022年)の著者)

 

docs.google.com

 ウェブメディア集英社オンラインでは、拙著を担当してくださった柴山浩紀さんが、インタビューに答えておられます。「当事者は嘘をつく」についてもお話しいただいています。

shueisha.online

 私はもともと、性暴力の被害体験について書くつもりはなかったんですが、企画が決まってから「困った、エッセイを書こうとすると、必ず被害の話が出てきてしまう」という状態に陥って、「もうこれを書くしかないな」と覚悟を決めました。もちろん、柴山さんが最初に会いに来てくださったときは、私がサバイバーだということは知りませんでした。そこから、私はモチャモチャと「何書いたらいいんだろう」と迷走していたので、このまま本が出ないのではないかと思っていました。どうにもならないので、「とりあえず、全部書きたいんですけど」と企画会議が通らないまま、原稿をスタートしました。書いている時も「こんな話、面白いかなあ?」と思っていたし、だめだったら同人誌にして文学フリマで売るつもりでした。出版されることになってからも「売れるのかなあ」と思い、「まあでも、売れなくても在庫を抱えるのは私じゃなくて筑摩書房だから商業はありがたいな」などと考えたりしていました。なので、売れたのは柴山さんの仕事の成果だし、実際に売れてよかったです。それから、買ってくださった方や話題にしてくださった方も、ありがとうございます。私は今回、本当の本当に文章を書いただけです。なので、なんだか恐縮なんですが……

 ブログでも、拙著をご紹介していただいています。研究者の竹端寛さんが、障害者運動の歴史を辿りながら、拙著を取り上げてくださいました。私自身は、竹端さんの文章を拝読し、「自己変革機能」と「社会変革機能」を軸に、障害者の当事者運動と照らし合わせながら、こんなふうにまとめていただけるのは、ありがたいことだと思いました。

surume.org

 また、臨床心理士の越智誠さんからは、家族介護の経験のなかで感じた専門家への怒りを出発点に、心理の世界に入っていかれた経験と照らし合わせながら、拙著をご紹介いただいています。

note.com

 竹端さんや越智さんのような研究者/支援者からのレスポンスをいただくことが、私にとって研究を続けたり、支援の場が変わっていくことを信じたりすることの力になると感じています。それぞれの場で闘っている人がいると思えるのはありがたいことです。

 さて、ウェブメディアModern Timesでは、私の新しい連載が始まりました。宮崎駿がテーマで、3回の予定です。1回目は、ロシアのウクライナ侵攻について少し触れ、宮崎の戦争体験などについても書いています。2回目はナウシカの話の予定です。

www.moderntimes.tv

 

 

近況

 拙著をメディアで取り上げていただいています。毎日新聞共同通信での取材記事は、ネットでも公開されましたのでご覧いただいた方もいらっしゃるかもしれません。

 書評サイトHONZでは、首藤さんに引き続き、中野亜海さんも拙著を取り上げてくださいました。

honz.jp

 レイバーネットでは、大西赤人さんが評を書いてくださっています。赤西さんは、以下の記事でも書いてあるように、「『当事者性』からなるべく距離を置き、悪く言えば第三者的、良く言えば客観的な立場で関わりたい」と考えてこられました。それに対して、私の当事者丸出しの立場は相反するわけですが、そこを正面から取り上げてくださっています。

www.labornetjp.org

 ほかにも、雑誌「新潮」で津村記久子さんが取り上げてくださったり、京大生協の書評誌「綴葉」がご紹介くださったりしています。障害者問題資料センターりぼん社の季刊「しずく」には、私の大学院のゼミの先輩にあたる野崎泰伸さんが書評を寄せてくださっています。本当にありがたいです。

 また、図書新聞では批評家の川口好美さんが、拙著の書評を書いてくださいました。そのなかで以下のように述べられています。

「当事者」の立場に固執することだけが重要なのではないし、様々な立場を認め、それらに平等に目配りすることだけが重要なのでもない。出来事の瞬間、ひとは否応なくひとつの立場に立つ。立たされる。しかし他人たちと共にこの世界に存在している以上、ひとつの立場にしか立たない、立てないというのはナンセンスである。「私」とはこの容赦のない背理によって引き起こされる葛藤・抵抗・ねじれの”場”そのものではないのか。そうして本来「物語」とは、ねじれをねじれのまま、架け橋不可能なものを架け橋不可能なまま引き受ける意志と努力と屈惑と驚きを語ろうとする、「私」のぎりぎりの表現行為ではないのか。

 この箇所いいなあ、と思います。自分の本が媒体となって、こういう文章が生まれてきたのは作者冥利につきます。私は批評は、批評対象と独立して、完結できるだけの強度を持つべきだと思っているのですが、まさにこれはそうだなあ、と。「私の本は関係ないやん」みたいな話に飛んでいってるんですが、批評として読んでいて面白いです。川口さんは私と同世代のようですし、似たような人文系カルチャーにいたのだろうと想像します。

 川口さんは、静岡県川根本町でカフェをやっておられるそうです。私は恥ずかしながら静岡は海側しか知らなかったので、地図で検索して、「予想以上に山側に広がる静岡県」と思いました。

tendenco.base.shop

 私は、ベルギーでの滞在が2年目に入りました。今年からは、もっと積極的に共同研究に取り組もうと決意して、あれこれとプロジェクトに入っています。英語でのコミュニケーションは今も苦手ですが、なんだかんだやっています。Covid19による規制もどんどん解除されてきているし、研究棟にいる人も増えてきたので、やっと「在外研究」っぽくなってきました。よかったです*1

 

*1:ただ、いまだに住民カードが更新できていません。もう4月なかばなんですが……