近況

 2024年4月1日付で、東北大学文学研究科倫理学研究室に准教授として着任いたしました。すぐに業務が始まり、忙しく働いているうちに3ヶ月が経過していました。来た頃には寒々しい風景だった仙台の街も、緑に萌える初夏となりました。ときどき、クマが大学の敷地内に出没したというメールが来てビビります。カモシカも駐車場のあたりをうろうろすることがあるらしく、野生動物がたくさんいる自然あふれるキャンパスです。

 5月に発売された岩波書店『世界』に小田原のどかさんとの対談が掲載されました。水俣とアート、記憶の継承活動などについてお話ししました。宇野重規さんが、朝日新聞の論壇時評で取り上げてくださったそうです。

 5月29-31日にエストニア・タリン大学で開催されたEuropean forum for restoraitve jusitceのconferenceで、ポスター発表をしました。水俣で実施したプロジェクトの報告をしました。今回は、ウクライナ戦争をはじめとして、紛争地域で活動している人たちの実践報告がいくつもあり、修復的正義について何ができるのかについての議論が起きていました。切迫した状況でも、対話の可能性を拓き、未来を信じて新しい取り組みを続けていく声がありました。私はいつもこの学会で「諦めない」「変えることを続ける」ということの重みを学んでいるように思います*1

www.euforumrj.org

 6月8日には、東北大学で「関係論的価値の謎」という小規模なワークショップをやりました。いろんな国・地域の出身者が参加してくれたので、地域の歴史的・文化的・政治的文脈に沿って自然観を考慮することについて議論しました。最近は私は環境について「言葉にならない価値」をどうやって表現していくのかに関心があります。

www.sal.tohoku.ac.jp

 6月29日には、沖縄・琉球大学で日本被害者学会で報告「被害者性を持つ地域と記憶の継承 水俣地域を事例にあげて」を行いました。沖縄で初めて被害者学会が開催され、沖縄という地域の文脈の上で、被害者の問題が議論されました。被害者学とローカリティの問題はずっと気になっていたので、参加できて本当によかったです。沖縄での開催は、梅雨や台風の心配、交通機関の配慮、オンラインとのハイブリット開催等、準備が大変だったそうで、スタッフの皆さんに心から感謝しています。

 そして、日本の被害者学会は久しぶりの参加でしたが、登壇者、参加者ともにジェンダーバランスが良くて、とても快適でした。ジェンダーセクシュアリティの観点からの議論も活発で、男性の性被害者の問題もしっかり取り上げられていて、ここ10年ほどの日本の被害者学の変化を感じました*2。修復的正義の話も関心を持っていただけてよかったです。

www.victimology.jp

 そういうわけで、いろいろと活動をしております。9月はヨーロッパ犯罪学会で報告予定です。今年はルーマニアブカレストで開催予定です。

www.eurocrim2024.com

 

*1:勤務を始めていろいろあったのですが、投げやりにならないで頑張っていけるのは、こういう場所があるからだと思っています。

*2:沖縄開催ということで、今回は特別に、ということもあったかもしれませんが……