近況

 気がつくと6月に入ってしまいました。ベルギーでの在外研究はようやく軌道に乗ってきたところです。今月はオンラインでのプレゼンテーションが3本と、論文の締め切りが2本あるという地獄のようなスケジュールで、ここ数週間は毎日、原稿と向かい合っています*1

 先週は、環境問題における修復的正義(Environmental restorative justice, ERJ)についての2日間のオンラインワークショップに参加しました。朝9時から夜7時まで、ぶっ通しで議論するという、強化合宿のような企画でしたが、どの報告者もモチベーションが高く、大変勉強になりました。法学者や環境活動家、アーティスト、先住民など、それぞれの立場が違い、主張も異なります。時にはどうやっても折り合いのつかない議論もありましたが、お互いが敬意を持ち、率直に話し合うことで、ずっと和やかな雰囲気で意見交換が行われました。私は、まだまだ英語の心配があるのですが、自分のプレゼンテーションは大変評判が良かったですし、他の人のセッションでも積極的に議論に参加しました。最後のクロージングでは、みんな疲れ果てていたのもあって感傷的になり、また会おうと手を振り当って終わるという、ちょっぴり感動的なフィナーレでした。

www.iisj.net

 本来ならば、このワークショップはスペイン北部のOnatiという街で開催されるはずでしたが、パンデミックのため、オンライン開催となりました。私は主催者の一人と懇意にしているのですが、どうしてもオンラインミーティングは情報交換が優勢になる傾向があり、そうすると踏み込んだ議論は回避されるか、過剰に対立的になりやすいという話をしたりしていました。結果的にそれは杞憂に終わり、本当によかったです。ファシリテーターがうまく話を引き出す仕切り方をしたことと、議論時間を長くとったことで、最初は硬く形式的な質問が多かったのですが、だんだんとオープンで自分の状況や心情を織り交ぜた、自由な発言が増えてきました。私にとってはオンラインミーティングのイメージを変える、いいきかっけになりました。

 それでも、「やっぱり会いたかった!」「バスクに行きたかった!」という声があがり、このプロジェクトが終わった後に、フォローアップのワークショップを再びOnatiでやりたいというコメントもありました。オンラインだからこそ、ヨーロッパだけではなく、ラテンアメリカやアフリカ、オーストラリアからの参加が可能になったこともあり、それはそれで素晴らしいのですが、そのあと「会って話したい人たち」が増えるのはもっと良いことだなあと思いました。

 今月、ほかに予定しているのはアジア犯罪学会(ACS2020)とヨーロッパ修復的正義フォーラム(EFRJ)のヴァーチャルシンポジウムです。ACS2020は、昨年の大会延期のあと、オンライン開催になりました。

acs2020.org

 私はグリーン文化犯罪学(Green-cultural criminology)の視点から、ポップカルチャーを用いた環境教育の可能性について論じます。具体的には、コミック版の宮崎駿風の谷のナウシカ」を取り上げます。

 EFRJでは、私はERJのワーキンググループのメンバーなので、パネルセッションで報告者の一人として参加します。こちらは水俣について報告する予定です。

www.euforumrj.org

 オンラインといえども、参加料は安くはないものが多く、なかなか気軽に参加をお誘いできるイベントではありません。報告内容はのちのち、論文やエッセイなどとして形にしていきたいと思っています。

 

 

*1:と言いつつ、ラーケン王立植物園の温室公開にはバッチリ行きました。美しかったです。