近況

 拙著『当事者は嘘をつく』が増刷になりました。大変ありがたいことです。現在、アマゾンでは在庫切れでお手元に届くまで時間がかかりますが、hontoですと通常配送が可能なようです。また、全国の本屋さんに配本されていますので、お近くの店舗にお問合せいただいたほうが早いかもしれません。

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 ツイッターなどでもたくさんの反響をいただいて、ありがたい限りです。高島鈴さんに、「人文書新刊・近刊ウォッチング」でとりあげていただきました。

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 また、首藤淳哉さんに書評をいただきました。「今年のベスト級の一冊に出会ってしまった」とのことで、恐縮しています。

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 あちこちで話題にしていただいて、嬉しいですし、無事に売れて本当に良かったです。他方、本人は、実質的には全国的にカムアウトしてしまった状況なので、ものすごくしんどいです。私はひたすらこのブログでも「声を上げる必要はない」と言ってきましたし、当事者のカムアウトのしんどさについて書いてきたので、そこは遠慮なく「私はしんどい」と書いておこうと思います*1

 ツイッターをやめたのは、この本とは関係なかったのですが、「アカウントがなくてよかった」とも思いました。たぶん、私の手に余っただろうと思います。たくさんの人が言及してくださることは嬉しく、反応したい気持ちもあります。反面、そもそも「本の作者がSNSで読者の感想を読む・反応する」というのはここ数年できた慣習なのだなあと改めて思ったりしています。いただいたコメントはそのまま胸にしまっておくことにしました。

 だいたい、私はカムアウトすると何か自分の大事なものが壊れるというジンクスがあるのですが、今回はパソコンが壊れました*2。身代わりとか、依代とか、そういうものだろうと思っています。呪術的思考のもと、生きております。しんどいので、ずっと呪術廻戦を漫画で読んでいました*3。最強の五条悟でも、呪術界の改革がなかなか進められないのだから、われらが学会の性差別がなかなかなくせないのは仕方ないなあ、などと考えていました*4

 それから、ウェブメディア「Modern Times」で連載していた修復的正義のシリーズの、第2回、第3回が公開されています。2回目では、具体的に修復的正義で行われる対話の様子を、海外の事例をアレンジしてわかりやすく提示しています。3回目では性暴力被害者の視点から、修復的正義の実践にどのような意義があるのかを書いています。「Modern Times」での修復的正義についての連載はこれで終わりですが、春にはまた別のテーマでのシリーズを執筆予定です。

www.moderntimes.tv

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 研究の方は、「風の谷のナウシカ」に関する英語論文を書いているところです。今年度、三本目の英語論文なので、熱心に研究していると自分でも思います。無事に書き終えて、出版まで漕ぎ着けるように頑張りたいです。6月は、国際学会が3本あるのでクラクラしますが、欧州はほとんど対面開催が再開されているので楽しみです。

 学会を対面に戻すか、オンライン継続かの議論はあるようです。私の経験から言うと、それなりに学会に知り合いのいる中堅〜ベテランはオンライン開催でも問題ないと思います。むしろ、移動の手間が減り、費用も削減されるのでメリットが大きいようです。他方、院生や初期キャリアの研究者にとって、オンライン開催は厳しいものだと、個人的には感じています。知り合いもおらず、言語に不安がある状態で、オンラインで親交を深めるのは至難の業です。私自身、コロナ渦の前にランチタイムや休憩時間に話かけて、短い会話でもお互いの顔を見てやりとりした経験が、今の仕事に繋がっています。対面開催だと、会場移動のために一緒に歩いたり、時間を持て余して暇をしたり、隣に座った人に挨拶がわりに話を始めたり、という偶発的なコミュニケーションが多発しますが、オンラインはそういう「隙」がありません。もちろん、メールやチャットでも可能だと言う意見は知っていますが……これは、大学院のゼミなどにも言えることで、「オンラインで良い」とはとても考えられないと、私は思っています。

*1:こういうのはすぐ忘れてしまうし、あとから「大丈夫だった気がする」と思いがちだというのもあります。

*2:自分のミスなので、自業自得なんですが……

*3:アニメはこちらで配信がありません。映画も観れていません、残念!

*4:でも、自分の育てたお気に入りの弟子によって、腐った業界を変えるという発想は、あんまりよくないのでは?と五条さんに言いたい気持ちはあります。