近況

 半年くらい更新していなかったので、本人も何があったのかほとんど覚えていません。一月は東京で仕事して、二月は水俣に一ヶ月いて、三月は伊勢や天草に行き、東京で仕事して、四月も一ヶ月水俣にいました。五月後半から六月前半はオランダ・ベルギーにいて、帰ってから東京で仕事して、天草・博多に行ってから今は水俣にいます。ブログを書く気力もないくらい疲れてたんですが、自業自得だな、と思います。でも楽しかったし、今はやれるだけのことをやろうと思っています。

書いたもの

 世界で三回の連載をしていました。神戸・福島・水俣に触れつつ、過去の記憶を将来世代に伝えることについて書いたエッセイです。時流を全く読まず、好きに書かせてもらったのですが、編集さんが気に入ってくださって本当に嬉しかったです。これからもコツコツと誠実に書いていきたいと思います。

 英語ですが、宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」を論じた論文が、共著の本に掲載されました。Palgraveから出たグリーン犯罪学の論文集の中の一本です。漫画やアニメに馴染みのない人たちも含めて、広い国際的な読者に伝わるよう悪戦苦闘して書きました。アニメや漫画は、文字を読むのが苦手な人たちにも、楽しんでもらえるメディアで、環境問題について考える際にもぜひ活用してほしいと思っています。特に漫画版ナウシカのような作品は、単純な「環境を守りましょう」というメッセージだけではなく、自然や生命に対する見方を掘り下げて伝えています。そこをなんとか言語化しようと試みています。要領が悪くて、なかなか書けない私に付き合ってくれたエディターにも、感謝しています。今回は本当に出てよかった!

link.springer.com

 今後の予定ですが、京都新聞の「現代のことば」欄を担当することになりました。2ヶ月に一回くらいは登場する予定です。一応、来年は本が出る予定ですが、そちらはまだなにも決まっていません。がんばります。

話したこと

 5月25-26日にユトレヒトで開催された国際学会Green Crimes and Ecojustice Conference 2023で報告をしました。これは欧州で初めてのグリーン犯罪学のようです。集まった人も共通の言語・認識がないので、あちこちで微妙な空気が流れ、ぎこちない場面も多かったですが、そこがよかったです。もちろん、主流は欧州の環境活動家ではありますが、バルカン半島やアフリカの研究者からかれらに異議申し立てがあったり、実証研究とアートの研究ですれ違いがあったりしました。今後、グリーン犯罪学がどんなふうに展開していくのかわかりませんが、私も末席で楽しく好きなことを話したいなあと思っています。

 今回は私は「The communicating pollution memory through collaboration between artists and activists: in the case of the pollution 'Minamata Disease' in Japan」と題して、水俣でやっている紙芝居製作の活動を取り上げました。結婚を機に水俣に来て、夫や義理の父母、自分が水俣病になりながらも、必死に働いて子どもを育て、元気に生きた女性のライフストーリーを描いた紙芝居です。熊本日日新聞でも取り上げられました。

kumanichi.com

 次の世代に、水俣の地域の歴史をどうやって伝えているのかを模索している様子を学会では報告しました。でも、なかなか伝わらなかったのが正直なところです。この日参加していた環境活動家は、最先端の情報を追いながら、すぐに行動に移したいと考えている人が多く、「これは何の役に立つのか」と遠回しに聞かれました。ふだん、一緒にやっている修復的正義研究の仲間にその件を話すと「こういうアート・アプローチの研究は、まだまだ模索段階だね」という議論になりました。私だけでなく、みんな悪戦苦闘しているようです。

 7月1-2日は、Asian Philosophical Textで学会報告しました。こちらは小規模ですし、報告や質疑の時間が長く取れるので、深く議論できる場です。今回は、「A theoretical framework for ‘untold memories’ of disasters: In the case of Minamata disease, Japan」と題し、「語られない記憶」について議論しました。活動家の小泉初恵さんにも来てもらって一緒に報告をしました。学会は、研究者だけが集まることが多いのですが、近年、犯罪学会では活動家や当事者とともに登壇するスタイルも増えてきています。私も、環境問題は研究者だけではなく、活動家の声も反映しながら議論するほうが良いと思っているので、お願いしてお招きしました。今後も、活動家やアーティストとともに議論するスタイルは取り入れていきたいと思っています。

 7月11日に、「本のあるところajiro」さんでトークイベントをしました。(本当は宣伝がてらやる前に情報あげればよかったんですが、申し訳ない)本屋さんとカフェが一体になったような素敵な空間でお話ししました。思ったより立ち入った話をして、盛り上がったように思います。今回はオンライン配信はしなかったんですが、正直なところ、そのほうが話は濃密になります。やっぱり対面の力かな、と思います。*1

note.com

 9月はEurocrimで学会報告をします。今年はイタリアのフィレンツェで開催予定です。有名観光地であるのは、ミーハー心で嬉しいのと、宿泊代が跳ね上がるので凹むのと、両方あります。

eurocrim2023.com

Web公開

 Modern Timesさんで連載をしています。なかなか紹介できていないのですが、リンクだけでも貼っておきます。

www.moderntimes.tv

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 上の三回は環境問題だったので筆が軽かったです。やっぱり、慣れてる題材だと多少の自信もあるし、書きやすいですね。

 この回は、「データの活用」がテーマだったので研究調査について書いています。私は社会学者ではないので、あまり調査法に詳しくないので、ヒイヒイ言いながら、なんとか書きました。院生さんたちは参考にしてはいけません。これはPD以降のフリースタイルの研究者の自己流調査法です。

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 こちらでも紹介しているThe Network of Asian Environmental Philosophyの活動についても書きました。アジアと欧州では自然観が違うのでそれを打ち出したいと思いつつ、いざやろうとすると議論は簡単ではなく、試行錯誤している様子を書いています。

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 昨日も紹介した、宮崎駿の「君たちはどう生きるか」の記事もここの連載の一環です。すぐに出してもらうようお願いして、公開してもらっています。この作品のことで頭がいっぱいで、まだいろいろ書きたいし、議論できればいいなと思っています。北米でも公開が決まったようですが、この作品は世界ではどう評価されるんでしょうね。

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*1:そのぶん、来場者の方のコスト・時間がかかってしまうのでオンランの良さはよくわかっていますが!