近況

 ベルギーはすっかり秋が深まり、グレーの空と雨の毎日です。心の準備はしていたものの、うつうつと日々を過ごし、家でぼんやりする時間が増えました。帰国が近づいているので、もっと遊びに行ったり博物館を見て回りたい気持ちはあるのに、休日は「部屋の掃除ができたら上出来」というのが現状です。仕方ないので、ソファで文学作品を読んだりして、そのまま寝落ちしたりしています。街も人がまばらだし、そんなもんなんでしょうね。

 先日、エディンバラ大学で開催されたAsian Philosophcal Textの第4回大会に参加し、報告を行いました。初めて知った学会なのですが、細分化された人文系の学問を統合し、領域横断的に「哲学的なテキスト」を議論する場で、とても面白かったです。私自身は、ずっと水俣の人たちの手記や機関紙などをテキストとして扱い、哲学的に研究してきたので、それを受け入れてもらえる学会が見つかったのは本当にありがたいです。

philevents.org

 それはさておき、渡欧して1年半以上が経っているわけですが、自分の英語力に対するフラストレーションは強くなるばかりで、そこは本当に悩んでいます。もちろん、以前よりは格段にリスニングもスピーキングもできるようになりました。こっちに来るまで、正直、私は自分に対する期待値が低かったので「ちょっと話せるようになればいいわ」くらいに思っていました。でも、やればやるほど欲が出るし、できない自分に腹が立つし、帰国は迫っているし、絶叫しそうになります。語学の上達に近道はないので、焦らず努力を続けるしかないのですが……ただ、以前は「私は英語はできない(たぶん永遠に)」と漠然と思っていたわけで、今の「私は英語が下手だ」のほうが、まだ前向きになっているという気はします。

 普段は相変わらずコツコツと研究をしています。もうすぐ英語の査読論文が出版になりますし、某雑誌へ寄稿した原稿もそのうち公開されるはずです。来年の見通しがなかなか立っていないのですが、ありがたいことにポツポツとご依頼はいただいているので、論文や商業原稿の執筆を中心にした生活になりそうです。本人は大学教員としての正規の就職*1を希望していますが、狭き門なので思うようにはいきません。研究費を獲得して、あと5年は研究を続けるのが目標です。

 WebメディアのModern Timesでの連載は続いています。今回は労働編で3回続きます。第一回は、宮崎駿の労働運動と高畑勲の関係などを中心に書いています。もうすぐ公開される第二回では「太陽の王子ホルスの大冒険」について論じています。正面から宮崎・高畑の社会主義思想を取り上げた渋いシリーズですが、ご覧いただければ幸いです。

www.moderntimes.tv

 さて、お知らせです。長らく活動していた、同人サークル「ズレフェミ屋」ですが、本日(11/20)開催された文学フリマ東京をもって、活動停止・解散となりました。これまで、当サークルに来てくださったかたにお礼申し上げます。最初は栗田隆子さんと二人で始めたサークルだったのですが、いろんな方が合同参加や冊子の委託をしてくださいました。サークルを訪問される方も多彩で、賑やかな活動でとても楽しかったです。ありがとうございました。

 今後は、個人で細々と同人活動を続けようと思っています。新しいサークル名は「薄明通信」にしました。英語だとTwilight Communicationです。気分を一新して、ロマンティックな名前にしてみました。次回は1/15の文学フリマ京都に参加予定です。新刊の谷川雁オマージュのエッセイ集が出せればいいなあと思っています。

bunfree.net

 「なんで、谷川雁なのか?」という自分でも謎の展開なんですが、同人誌は思いつきが一番大事なのです。そして、表紙のデザインを考えたり、印刷所の見積もりを眺めたりしていると、本当にワクワクしてきて「ああ、同人活動最高だなあ」と思いました。なにより、本文の原稿が上がらないと、本は出せないんですが……でも、出したいなあと思っています。

*1:私は授業をするのが好きだし、できれば小規模なゼミとかやりながら、楽しく若い人とともに学ぶ環境づくりをしたい、というふんわりした気持ちがあります。でも、今のアカデミアの状況では叶えるのが一番難しい夢かもしれませんね。