小池一夫氏の二次加害発言について
昨日からネットで話題になっているのが、小池一夫氏の二次加害発言である。小池さんは「子連れ狼」などの漫画原作で有名であり、ツイッターでも28万人以上のフォロワーを持つ。非常にネット上で発言力のある人物だ。
その小池さんがある事件の被害者に対し、次のような発言を行った。
【今日の家人】今日も中1の女の子を連れ去ったと、馬鹿な男が捕まっていたけど、きっかけはネットの出会い系サイトなのよ。中1で男が欲しかったのか、お金が欲しかったのか分からないけど、中1で出会い系サイトで男と知り合う女の子は、もう女の子じゃない。女。しかも、倫理観も貞操観念もない女。
https://twitter.com/koikekazuo/status/701261058237812737
上記の発言の主な問題点を以下に列記しておく。
(1)「家人」という女性を隠れ蓑にすること
「家人」とは小池さんの女性のパートナーを指す。男性である小池さんが直接発言するのではなく、「女性」の口を借りて話すことで、女性同士の発言をほのめかしている。また、男性の性差別意識を「女性」を隠れ蓑にして批判を避けようとしている。本来の発言者の女性が言ったのかどうかも真偽は明らかではない。(「女性」のアイコンを使った悪質な創作である可能性がある)
(2)古い性規範の押し付け
「貞操観念」とは、女性が自己の欲するままに性的に行動することを抑制し。社会規範によって抑圧する観念である。この背景には「男性が女性を所有する」という古い価値規範がある。女性が誰とどのような性的関係を持とうと個人の自由であり、「倫理観がない」などということは性差別にあたる。
(3)未成年の女性の性的欲望の否定
思春期に入ると性別にかかわらず、性的な欲望が顕著になっていきやすい。自我の目覚めや、社会的な性意識の学習、ホルモンバランスなど、様々な理由が合わさって「性的なもの」へ惹きつけられたり、拒否感を持ったりする。男性のこうした性的な関心は肯定的に語られることが多いが、女性の性的関心は否定的に語られることが多い。その理由には(2)が大きい。
未成年の女性が、「女」であっても「女の子」であっても自由なことではあるが、性的欲望によって分断することはできない。思春期の子どもたちは、大人と子どもの境目で逡巡している。そのため、性に限らず、未知の「大人の社会」へ同化と反発を繰り返しながら参入することで成長していく。子どもたちの「倫理観」はこうした「大人の社会」社会への挑戦の中で育まれていくものである。
だから、女性であっても、性的なものへの好奇心の高まりから、「出会い系サイト」を使うことは何もおかしなことではない。未成年の使用が禁止がされていれば、いっそう興味を持つことだろう。同時に、社会経験の少なさから、「出会い系サイト」を通じて、大人にだまされたり傷つけられたりする危険も高い。こうした状況から、「出会い系サイト」をゾーニングやフィルタリングによって未成年から遠ざけることが良いのか、危険性を明示的に教えることが良いのかは議論があるだろう。どちらにしろ、危険物を子どもたちの手の届くところに置いている責任は大人にある。
(4)出会い系を利用せざるをえない未成年への無理解
出会い系サイトを使う未成年のうち、非常に困難な状況に置かれている子どもたちもいる。貧困や虐待から生き延びるための金銭を得るために利用する未成年もいれば、孤独な心を埋める方法を他に知らずに利用する未成年もいる。この背景には日本の児童福祉が全く足りていないことがあることは、何度も指摘されてきた。少し調べればわかることの手間を惜しみ(または知っているのにあえて事実を隠して)偏見のままに発言している。
以上のように、非常に問題のある発言だと言える。ネット上で知名人によるこうした発言は、小池さんに限らず何度も繰り返されているのだが、ツイッターだと流れてしまいやすいので備忘録として記録していく。
「出会い系サイトに登録する少女たちを止めるべきだ!」「自衛のために必要なんだ!」という方のために、過去記事もリンクしておきます。
「性暴力は自衛可能か?」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20091208/1260272432
「風俗で働くことを怒ることは百害あって一利なし」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20131211/1386736392
困難な状況に置かれている少女たちについての本はこちら。
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