生活保護についての入門書

 生活保護法の改案の話が出ている。先日、生活保護についての書籍を購入したところなので書影を紹介。

和久井みちる「生活保護とあたし」

生活保護とあたし

生活保護とあたし

DV被害を受けて夫から必死で逃げた和久井さん。心に受けたダメージは大きく、焦るけれど働けない。生活保護を受けようと窓口にいったが、対応は冷たくまた消耗していく。ギリギリの保護費の中で買ったものも、監査ですべて調べられ、自由に買い物なんてとてもできない生活の中、マスコミの不正受給のバッシングにさらされる。生活保護受給の当事者が、本当の実態を知って欲しいと書いた本。

藤田孝典「ひとりも殺させない それでも生活保護を否定しますか」

ひとりも殺させない: それでも生活保護を否定しますか

ひとりも殺させない: それでも生活保護を否定しますか

藤田さんは、住む場所のない人に住まいを提供するNPOを運営している。家がない、家で安心して暮らせない人のために、行政手続きを手伝う。また、シェルターも経営している。野宿者と生活保護の問題に正面から向き合うソーシャルワーカーだ。そして役所の水際作戦で生活保護受給ができなかったり、貧困ビジネスに取り込まれたりする中で、貧困者が死へと追いやられていく現状を報告している。
 藤田さんが提案するのは「ジョブファースト(仕事優先)」ではなく「ウェルフェアファースト(福祉優先)」の自立だ。焦って就職試験を受けて落ちて深く傷ついたり、合わない職場で無理をしたり、早い離職をしてしまったりして、精神的に調子を崩すことで生活保護から余計に抜け出しにくくなることがある。また、母子世帯では母親が精神不調や育児の問題で悩んでいることも多い。藤田さんの提案する「ウェルフェアファースト」では不安や悩みの問題をサポートして心を整理してから、就労に移っていくのである。
 また、藤田さんは行政の審議会にも入った経験があり、政策的な問題にも触れている。BI(ベーシックインカム)についての疑問も述べられ、サポートなしにお金だけ渡すような仕組みでは有用な支援ではないとし、ソーシャルワーカーの質を挙げることを訴えている。
 そして、自分もNPOに勤務し、経済的な地盤が弱いうえに難病にかかり、先行きが不安であることを告白している。そして、同世代または下の世代に、生活保護受給者を怠けているとバッシングするのではなく、「自分もつらい」ということを認めて、頑張りすぎなくても生きられる社会を作るように行動していこうと呼びかけている。