「平均年収800万円が高い」という主張の根拠が主観では、単なるルサンチマンです。

 ブックマークコメントに
>800万普通に高いだろJK
というコメントをいただきました。(「JK」とは「常識的に・考えて」のことらしい)で、公立保育所の保育士さんがそんなガッポガッポ儲けてるとは思えないJK。
 私もあまり保育の仕事には詳しくないが、適当にググってみた。すると「ニッポンの平均年収」というサイトを見つけた。保育士の平均年収は327万円である。こ、これは少なすぎる!と思うが、とにかく鈴木さんの指摘する平均年収800万円が桁外れに多い収入であることはわかる。さて、なぜか?
 「公立保育所保育士年収」でググると、こんな記事↓が出てきた。

保育士の非正規率6割 自治労県本部の07年度公立保育所調査(4/20)

 県内の公立保育所に勤める保育士のうち、臨時や嘱託の非正規職員の割合は二〇〇七年度に58%に上り、自治労の全国調査でワースト2位だった前年度の57%を上回ったことが、自治労県本部が七日までに加盟職員労組を通じてまとめた調査で分かった。労働は正職員とほとんど変わらないものの、平均年収は生活保護水準(年間収入二百万円を想定)以下とみられ、通勤や時間外の各手当が一切ないケースもあった。「官製ワーキングプア」の問題が全国的に指摘される中、本県の保育現場の顕著な実態が浮き彫りになっている。
http://www.shimotsuke.co.jp/hensyu/news/php/s_news.php?f=k&d=20080420&n=2

ああ、予想通りすぎて泣ける調査結果が出た感じ。要するに、鈴木さんの持ち出した平均年収というのは、正規職員で算出したものだろう。おそらく正規職員の多くは、管理職(所長など)であると推察される。サラリーマンに置き換えれば、「会社役員の平均年収」みたいなもんだろう。そら多いわな。
 では、保育士はいくらもらうべきなのか。これは、労働に対する点数評価の基準が存在し、ペイ・エクィティとされている。一部の労働争議では、すでに日本の裁判所がその基準の持込を認めた。(くわしくは森ます美の報告)これは労働賃金における女性差別撤廃を目ざして設定されたものだが、労働全般にも適用できるだろう。また、これまで重視されてこなかった感情労働に対する点数評価の実践も、欧米では始められている。
 私が持っている、保育士の労働状況についてのデータは、インターネットで集めた信頼性の低いものだ。あいにく労働問題にはくらいので、鈴木さんのいう「保育士の平均年収800万円は(認可外保育所保育士に比べて)多いから減らすべき」という主張をこの観点から議論することは難しい。ただ、現在の平均年収を見て、「低いほうに合わせればいい」という発想が、頓珍漢だということは指摘しておく。
 ちなみに、鈴木さんは学習院大学准教授だが、先のサイトでは大学助教授の平均年収は906万円である。助教授という職業がもらいすぎ、というつもりはない。ただ、鈴木さんは、自分がいくらもらっているかを念頭に置いて、この記事を書いたのだろうか?年収とは、数字で表されているが、それが全てではない。