「市営保育所の今後のあり方に関する基本方針」(改定版)案に関する意見募集」
京都市が以下のように市営保育所の今後のあり方についてのパブリックコメントを9月25日まで募集してます。
「市営保育所の今後のあり方に関する基本方針」(改定版)案に関する意見募集
http://www.city.kyoto.lg.jp/templates/pubcomment/hokenfukushi/0000171816.html
このパブコメ募集の裏側になるのは、市営保育所の民間移管です。すでに、乳児保育所は民間移管され、現場は厳しい状況になったことを詳しい人からは聞いています。
現在の京都市の市営保育所では経験豊富な保育士の手厚いケアが子どもたちに行われています。それを、「より安い」という理由で廃止して民間に移すというのです。子どものケアにお金をかけて、手厚くすることは「贅沢」なのでしょうか?コストカットされるべきものなのでしょうか?
実際に保育所に子どもを通わせる知人からは以下の四点が問題であることを教えてもらいました。(文責は私にあります)特に私は四点目は非常に問題だと思います。
(1)京都市が「若い保育士を安く使おう」という発想で民間移管をしていること
なぜ民間の方が安いかというと、働く保育士の勤続年数が短く、若いために給与が低いからです。つまり、若い保育士を使い潰してコストカットをするというのです。これは、子どものケアへの影響もありますが、若年労働者の雇用の問題にもつながります。
(2)統合されている教育を分離する動きであること
小学校・中学校では障害のある子どもたちに対して、長く分離教育が行われてきました。障害があることは「特別」で「一般」の子どもたちと切り離されてきたのです。しかし、保育所では障害がある子どもも、そうでない子どもも、当たり前にいっしょに育っていきます。本来は障害者差別是正の視点からも、民間保育所の障害のある子どもへのケアを手厚くするべきであり、分離を進めるべきではありません。
(3)保育の質を継続するための保証がないこと
これまで民間移管をする先は「すでに認定保育園を運営している社会福祉法人など」だけでしたが、このたびは「私立幼稚園を運営している学校法人など」も含まれることになりました。これは私立幼稚園の「認定こども園」化を促進・支援するためです。そのため、「保育」の経験のない団体が移管先になる可能性も出てきました。そのため、これからの移管先の「保育内容」は不十分になる恐れもあります。
(4)移管後の評価・フォローアップがこれまでなかったこと
京都市ではすでに乳児保育所が移管されましたが、その後の運営状況に付いては調査報告もなされなければ、フォローアップもありません。保護者の戸惑いや不安、困っていることを集約する努力は一切されていません。また、移管先の保育士が早々に*1辞めざるを得ない事態が起き、乳児が動揺しているという懸念を預けている保護者は持っていますが、京都市は改善案等を示すことはありません。
以上のように、すでに行われた移管では、京都市側は現場で起きている事態に関心も持たず、フォローアップをしないという姿勢を続けています。その上で、今回の移管が行われることになりました。これでは、京都市側が保育を切り捨てて子どものケアに割く予算をカットしているとみなすしかないように思います。保護者の一部は京都市への抗議を考えている、と聞いています。
京都市外からの、パブコメは送れます。少しでも関心をお持ちの方は、京都市にお送りいただければありがたいです。
補足ですが、保育所運営に付いては以下のように書いてきました。
「市場原理はいいことづくめ?」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20080501/1209657480
「『平均年収800万円が高い』という主張の根拠が主観では、単なるルサンチマンです。」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20080502/1209720248
「保育園ガッポガッポ説 」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20091117/1258468200
「保育の現場の状況をどう考えるのか」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20091121/1258823393
*1:前の記述では「引き継ぎのさなかに保育士が」となっていたのですが、知人から間違っていることを指摘されたので修正しました。申し訳ありません