【震災】「(緊急アピール)災害時性暴力被害への対策を求めます」

 レイプ・クライシスネットワークから、災害時性暴力被害への対策を求める緊急アピールが出されています。以下に紹介していますので、ご覧ください。
 現在、私が確認した限りでは、宮城県の女性センターはエル・ソーラ仙台が相談業務を中止しています。震災後、一週間もたたない現地の状況では、そうなって当然でしょう。しかし、性暴力被害を受けた人が駆け込む窓口がないということでもあります。
 しかし、災害時でも性暴力は起きます。発生件数はまだわかりませんが、被害者支援は、もしかするといつも以上に必要かもしれません。専門機関の設置と、配慮を求めるアピールには私も賛同します。
 また、私がいま心配しているのは、災害時性暴力だけではありません。災害前に性暴力の被害経験を持つサバイバーたちの暮らしが気がかりです。避難所にいるサバイバーたちにとって、パーソナルスペースが確保できないことは大きな負担でしょう。身近な人から暴力を受けている場合でも、こうした状況では加害者を頼って生き延びなければならないこともあります。そして、災害時での再被害への恐怖は、被害経験を持つサバイバーにとって大きなストレスとなると思います。
 さらに、現在、東北はもちろん、原発のこともありますので北関東を含めて、生活している地域を離れるサバイバーも出てくるでしょう。そうすると、これまでの支援者や友人・恋人などと離れて生活をしなければならないこともあるでしょう。たとえば、関西への移住者に対しては、性暴力支援の窓口が、ドーンセンターや京都ウィングスなどにあることを知らせる必要もあるかもしれません。
 こうした人たちの対応が必要であることはここで確認しておきます。

(緊急アピール)災害時性暴力被害への対策を求めます

2011年3月11日、東北地方を中心に日本全土で非常に大きな地震が起こりました。

この地震により家屋などの倒壊や電気等ライフラインの損壊等等、多くの被害がみられ、被害の早急な収束と、二次的被害の縮小を心から祈ります。

レイプクライシス・ネットワークは、インターネット上での性暴力被害に関わる情報支援という活動をする私たち、一人の人間として何かが出来ないかということから、一つのアピール文を出すことにしました。

地震や洪水、津波などの自然災害が起こると、その混乱に乗じてレイプ・性暴力などの犯罪行為、性的弱者に対する暴力的な行為が増加する傾向にあります。
災害時には死角も増え、加害者が犯行に及びやすいこと、そして、男女混合の避難所やトイレ、着替え場所が無いことや、衛生を保つ為のライフラインが不足することなど、多くの面によって、全ての人にとってストレスフルな状況にさらされます。
その中でも、女性や子ども、老人、障がい者、他多くのマイノリティの方にとって、そのストレス状況は多大なものになります。

阪神大震災などでの教訓を受け、自然災害後の人災を出さないために、それらについての支援をより充実させることを願います。

政府等緊急支援に携わる各所に於いては、「生きて行く為の支援」をお願いしたいのです。その為の人材の投入及び予算を拡充し一人でも多くの被災者の方にとって少しでも支えを増せるような施策をお願いします。

具体的なアピールについては以下に記載します。
このアピールに賛同いただける方はrc-net@goo.jpまでご連絡ください。随時賛同者として当記事上にあげさせていただきます。
また、文言の追加などについてもお知らせください。こちらも、精査の上、随時更新させていただきます。


※賛同として記事に反映するのは「名前(ある場合は所属)」と居住都道府県ですが、賛同のお知らせをお送り頂く際には、署名としての精度をあげるため、氏名と住所をお書き添え下さい。

※rc-net@goo.jpまでメールが送れないという問い合わせが数件。RC-NETの問い合わせフォーム(http://rc-net.info/cgi-bin/mail.html)から送ることもできます。

***「災害時の性暴力被害対策の充実を求めます」 ***

1、公式な災害時救援システムとして「性暴力被害者救援」を行ってください

災害時に性暴力が起きた場合、その事実を通常時よりも告げにくい状況になり、医療等の不足によりそのケアを受けることが著しく困難になります。
しかし、性暴力被害にあうということは、生命の危機にも直結するものであり、より早急な専門家の介入が必要になります。
これらを民間等に頼るのではなく、国や地方公共団体として公式に「性暴力救援システムの構築」を現地にて早急にしていただくことを望みます。
被害にあったことを告げられる場所を作ること、そして二次的な被害を生まないためにより安全な場所への避難が出来る事、医療機関にかかれること、またこうした時だから蔑ろにされがちな「法的手段」への移行について把握をするための「性暴力専門の公的システム」が絶対に必要になります。

2、適切な情報提供を

災害に乗じて性暴力を始めとした犯罪が横行するということは、多かれ少なかれ発生することです。まして性暴力はその犯行自体に隠蔽体質があるため、その案数は計り知れないものがあります。そうした被害があるということ、そしてそうした被害をさせない環境を作るためにも、適切な情報提供をしてください。
性暴力被害に関わる情報を集め、適切にアウトプットしてください。
被害者にとってよりアクセスのしやすい方法で行ってください。

3、トイレを増やす
 
水不足や設備不良等によりトイレの使用を制限されることや、男女混合の利用などによって、安心・安全にトイレを使用出来ないことは、大きなストレスに繋がり、それを原因として水分をとらず体調不良になる方が多くいます。
また、無秩序に人が入る場所であることは、性暴力等の被害リスクを増します。

4、避難所等の外部であっても、野外は出来るだけ多くのライトなどで死角をなくす

地震等の影響で、災害後は非常に死角が多くなります。こんなところに必要ないだろうと思われるような場所であっても、こうこうとライトを照らすこと。人目につくと言う環境を作ることは、被害を出さないためにとても大切なことです。

5、「生活が出来る場所」を作る

着替えの場所、子どものおむつ替えや母乳をあげること、全て本来であれば人目につかない場所でやることですが、避難場所などではそれが出来なくなってしまいます。それ故に、人気の少ない場所にいったり、人の目に曝される場所でそれらをすることは、性暴力被害等のリスクを高めます。こうしたことは後回しにされがちですが、第一時的に、とても大切なことです。

6、一人親、独り住まいの老人などへの経済的支援

災害後、経済的に不安要素のある方々には住居などを含め、より多くの負担が強いられることになります。また、非正規雇用などの方については、災害により直結して仕事を失うという状態にもなります。そうした方への援助策の充実はとても大切なことです。

7、避難所への誘導

一人親などで他の助けが得られない場合、また子どもが小さいから迷惑をかけるのではないかと、避難所へ行くことの無い方がいます。そうした方の避難所への誘導のためにも、避難所での生活面を向上させてください。

8、多様性の理解

LGBT等セクシュアル・マイノリティーの方々にとって、当然のように男女のみに区分けされた配置や断定は多大なストレスを生みます。また、そうした中でLGBTであることが本人の意思とは別に周囲に認知されてしまうことがあれば、悲しい現実ではありますがその視線が暴力的なものに転化することもあります。性暴力は男女の問題だけではありません。セクシュアルマイノリティーについて意識・スキル・知識のある専門家の導入は急務です。

9、予防教育の拡充

人間の行動というのは「被害がある」という現実を知らなければ、なかなか予防には繋がりません。また、緊急時であるからといってこうした「声になりにくい犯罪」を放置することは決して許されざることです。適切な予防策を打つこと、またその周知によって性暴力を許さない「優しい」環境を作ることは今すぐ取り組むべき急務です。

10、見守り体制の強化

性暴力被害にあうリスクは老若男女全ての人が持っています。決して特別な人間のみの問題ではありません。そうしたことを理解した上でも、加害はより「弱者」と見なされる存在に向くことが多いです。特に子どもは、一瞬であれ親と離れてしまったら非常に無力な存在になります。子どもを一人にしないこと。地域のコミュニティーを最大限利用することは重要ですが、それに加え公的に子どもの見守り、保育などに別の場所をどんなに小さくてもいいから設けることや、子どもの居場所の確認などに尽力をお願いします。




<災害時のPTSD等心的外傷者への支援手引き>
兵庫県こころのケアセンターが発行されている冊子「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き」が、災害時にトラウマ経験をされた方への援助活動をするにあたって非常に役立ちます。
兵庫こころのケアセンターさん、リンクの許可をいただきましてありがとうございます。



(随時更新)


<賛同者>(敬称略 ご連絡頂いた順に掲載します)
※賛同として記事に反映するのは「名前(ある場合は所属)」と居住都道府県ですが、賛同のお知らせをお送り頂く際には、署名としての精度をあげるため、氏名と住所をお書き添え下さい。

RC-NET(レイプクライシス・ネットワーク) 岡田実穂
Rape Crisis Survivors Net 関西
市民ネットワーク・いなげ 金田由希
アティチューディナル・ヒーリング大阪 谷裕子
A.H.O,M  クリストファー・アレン・ドロウ
株式会社大林組(島根あさひ社会復帰促進センター臨床心理士) 毛利真弓
(性犯罪被害者サポート電話)「声を聴かせて」 にのみやさをり
(若者の性と恋愛のお悩み解決チャンネルを提供する民間事業者) Link-R
奈良少年刑務所 篠山義郎
ウィメンズネット・こうべ
Esalen(R)bodywork+Astrology 「kirari」 奥田晃子
しあわせなみだ
NPO法人女のスペース・おん 山崎菊乃(札幌)
design office MADART 中村聖悟(福祉とアート)
日本キリスト教団三・一教会 磯村正夫
クオータ制の実現をめざす会 神永れい子
北京JAC 日吉郁美
NPO法人ポラリスプロジェクトジャパン
女のサポートライン 田辺久子
地域支援ネット そよ風 八村有希子
福岡LGBT 交流会にじだまり 石崎杏理
認定NPO法人 国際子ども権利センター 甲斐田万智子
大阪教育大学 学校危機メンタルサポートセンター 野坂祐子
生活者ネットワーク 松浦敦子
神奈川大学法学研究所特別研究員 近江美保
ジャーナリスト 工藤律子
フォトジャーナリスト 篠田有史
特定非営利活動法人女性ヘルプネットワーク事務局長 野口真理子
世界女性会議岡山連絡会
東海学院大学健康福祉学部講師 芦田麗子
玄野武人(MSVネットワーク)

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http://blog.goo.ne.jp/rc-net/e/642eb94c8a0f6b3b9a81f3a218ea6b6a

上記の文に賛同したのと同時に、「3.トイレを増やす」に関しては、「被災地のLGBTが望むこと」*1を参考に「男女別のトイレだけではなく、大きな、覗き見の出来ないような誰でも入れるトイレも併設してほしい」を併記することを提案しました。