近況
ベルギーへ出立する日が近づいていますが、依然として先行きが不透明で気を揉んでいます。もう飛行機のチケットは確定していますし、海外転出届も出しているのですが、出国前のPCR検査で陽性になってしまえば渡航延期になるという、不安な状況です。
他方、受け入れ先のベルギーのルーヴェン・カソリック大学のスタッフとは、緊密に連絡が取れていますし、無事に入国さえできれば、ロックダウン下ではありますが、修復的正義の研究を進めていくことができそうです。朗報としては、英語論文が査読に通り、そろそろ論文誌で公開される予定です。EFRJの環境破壊における修復的正義のワーキンググループの議論も活発で、私としてはアートのアプローチによる実践の可能性を積極的に探求していきたいと思っています。
一年ほど前からこのブログではポツポツと書いてきましたが、私はもともと若いときには文学やアートに関心を持ち、感性の世界で生きている人たちに強く惹かれていました。しかしながら、いろんな事情のなかで、政策や制度について思考をめぐらし、研究者として提言をするために修練してきました。その揺り戻しのように、今はアートの世界に再び惹きつけられています。それも、美術館や劇場で「芸術」と名指されているものではなく、ひとびとが暮らしの中で細々と積み上げてきた活動に強く惹かれます。
私をそうした世界に連れ戻してくれたのは、やっぱり水俣であったようにも思います。そういしたことを考えながら、水俣についての新しい論文を書きました。以下のリンク先から無料で読めます。
小松原織香 「〈キツネに騙される力〉を取り戻す ― 水俣病を通した環境教育の可能性」『現代生命哲学研究』 第10号 (2021年3月):96-118
「私たちの世界にある、見えるものも、見えないものも大切にしていく」というもっとも素朴なところから出発して、もう一度、環境問題について考えていこうとしたときに、出てきたキーワードは「生命」でした。実は、『現代生命哲学研究』には第1号から投稿してきたのですが、10年経ってやっと初めて「生命」をテーマにした論文を書くことになりました。これもご縁なのだろうと思います。
2021年度の研究ですが、在外研究も行いますし、英語での積極的な学会報告・論文執筆を進めていくつもりです。それに加えて、新しい日本語の本の出版の企画が進んでいます。そのうち、また詳しい情報をお知らせできると思います。
さて、10年以上、運営していたTwitterのアカウントを先程、削除いたしました。ここ数週間、これまでTwitter上で、特定の研究者が嫌がらせに遭っていたことが明らかになりました。そこから、性差別的で陰湿な人間関係が暴露されています。研究者も人間ですから、嫌な奴もいれば、くだらない人間関係もあります。SNSに限らずとも、学会で陰口ややっかみを聞かされることも少なくありません。また、大学の予算難・人員削減に伴い、ポストをめぐるシビアな競争が激化しており、コミュニティの雰囲気は悪くなる一方です。私自身、先の見えない就職活動をずっと続けており、常に業績評価の競争の中で、精神的には追い詰められています。残念ながら、Twitterはそのような研究環境や人間関係を険悪にしていくツールになるようです。今回の件で、研究者としてTwitterを使い続けることは、心情的にはもうできないと思いました。
Twitterには、楽しかった思い出もありますし、ツイートをずっと追ってくださった方には感謝しています。ありがとうございました。