<裁判員裁判>5裁判員が被告に質問(性犯罪事例)
全国で初めて性犯罪事件を審理する裁判員裁判の公判が2日、青森地裁(小川賢司裁判長)で始まった。被害者のプライバシー保護が注目されたが、検察側は名前を「A」「B」と表現し、年齢を伏せて起訴状を朗読。また、男性5人、女性1人の裁判員のうち、5人が被告の心境や証言内容を質問した。補充裁判員は男性1人、女性2人。3日は被害者が別室からモニターを通して意見陳述し、論告求刑と最終弁論を行って結審する。4日午後に判決を言い渡す。
審理対象は住所不定、無職、田嶋靖広被告(22)。09年にアパートで女性に性的暴行を加え現金約5万円を奪うなどした2件の強盗強姦(ごうかん)罪を含む四つの事件で起訴されている。
検察側の起訴状朗読にあたり、小川裁判長は「被害者保護のためAさん、Bさんとして住所と年齢は読みません」と田嶋被告に説明。起訴内容を「間違いありません」と認めた田嶋被告は、小川裁判長に「法廷では被告も(被害者の)名前を口にすることは絶対にしないでください」と注意され、うなずいた。
被告人質問では、女性裁判員が、不在時に部屋に侵入した06年の強盗強姦事件に触れ、「Aさんが帰って来た時になぜ逃げなかったのか」と聞いた。田嶋被告が「足がすくんで動けなかった」と答えると、「窓から逃げていれば(被害者は)凄惨(せいさん)な事件に遭わなかったんじゃないか……」とつぶやいた。
また、傍聴席から見て右端の男性裁判員は「最初は人と接触することを避けていたが、Bさんの事件では人がいると分かっていて家に入った。心境の変化は」と質問。「葛藤(かっとう)があったけど(借金の)支払いをしなければならず、悪い方向に決断した」という答えに、「支払いを優先したということですね」と念を押した。【鈴木一也、坂本太郎、銭場裕司】
(9月2日22時32分配信 毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090902-00000123-mai-soci
上のカギカッコ内の発言は、どれだけ正確なものなのかわかりませんが、私は上の質問内容に違和感を持ちました。これまでの、犯罪心理学等の研究の積み上げは、裁判員裁判で反映することができるのでしょうか。*1以下、同ページの解説です。
◇検察側、事件の内容を詳細に説明
公判で検察側は、被害者のプライバシーに配慮して名前や年齢を伏せたが、事件状況については被告や被害者の供述調書を読み上げるなど詳細な説明をした。被告の悪質さを示すには一定の説明は避けられないが、裁判員制度の「口頭主義」と、被害者保護のバランスの難しさが浮かんだ。
従来の裁判は書面審理が中心。事件によっては、裁判官は膨大な書面を読む必要があったが、法廷の場では供述調書の内容などは要旨だけが読み上げられるケースが多かった。しかし、裁判員裁判では、一般市民が書面を読み込む負担の軽減と審理期間の短縮を図るため、「法廷で見て聞いて分かる立証」を原則としている。
検察側は証拠説明で再現写真などを示す際には、傍聴席から見える大型ディスプレーの電源を切断。被告の供述調書の読み上げでは一部を省略し「調書の写しをご覧ください」と説明したが、性的暴行の内容については詳述した。
傍聴した中京大法科大学院の柳本祐加子准教授(ジェンダー法)は「供述調書をそこまで読み上げる必要があるのか」と疑問を投げかけた。ネット上に流出する可能性も指摘し「警察に届け出ない人がますます増えるのでは」と懸念した。
青森地検の吉松悟検事正は「被害者には、やむを得ないことだと納得してもらっている」と説明。ある刑事裁判官は「検事から『犯人を重く処罰するために必要です』と言われれば被害者は嫌と言えない。『こんなに詳細に語られるとは思わなかった』と感じた可能性はある。ただ、証人尋問で本人の口から語らせるよりは良かったかもしれない」と話した。【喜浦遊、鈴木久美】
*1:これまでも諸研究の積み上げが反映されていたのか、とかそういう疑問もありますが。