栗原奈名子「ブラジルから来たおじいちゃん」アンコール上映

 「ブラジルから来たおじいちゃん」*1が東京と横浜でアンコール上映されるそうです。大正元年生まれの紺野堅一さんは、1931年にブラジルに渡航します。その後、移民として生活します。そして、90歳になっても、日本とブラジルを行き来して、子ども・孫や、日系移民たちに会いにきていました。以下が作品紹介です。

不況まっただ中の日本から、出稼ぎのつもりで単身ブラジルに渡って73年。言葉もわからない土地で、10回も職業を変え、破産の憂き目にもあった。だが、諦めずに努力した甲斐あって、今ではサンパウロで悠々自適の暮らしをしている。

しかし、紺野堅一さんは家にじっとしているご隠居さんではない。紺野さんは、毎年日本にやってくる。それは日本にデカセギに来ているブラジル人たちを訪ねるためだ。日本在住のブラジル人の数は現在31万人を超え、増加と滞在長期化傾向にある。彼らの姿が、出稼ぎのはずがブラジルに定住するはめになった自身の体験と重なる。彼らの将来はいったいどうなるのか。子供たちの教育の現状はどうか。若い世代の仕事の苦労話に耳を傾け、子供たちに勉強の様子を尋ねる。先生たちと懇談するため学校へも出かけていく。

そして、この旅は彼自身の人生を振り返る旅でもあった。「大日本帝国臣民」として、それともブラジル人として人生を終わるのか。レイルパス片手に新幹線、ローカル線、バスと乗り継ぎ、自分の足で歩きながら考える。

うんと前からグローバルに生きてきたおじいちゃんのくれるアドバイスは? また、旅の末に、彼のたどり着いたアイデンティティとは?
http://www.amky.org/senhordobrasil/story.html

日本からブラジルに渡った人たちの過酷な生活の様子は、これまでもルポや手記によって明らかにされてきました。戦争をはさんで、海の向こうでの厳しい生活を、紺野さんも「一世は犠牲になる、二世も犠牲になる、三世からやっとだ」というふうに、映画内で話しています。
 この映画のおもしろいところは、そうしたつらく厳しい側面を背景にしながら、飄々とした紺野さんを撮り続けているところです。とにかく、日本に着たら電車を乗り継ぎ、歩きまわって、人々に会いに行きます。紺野さんの穏やかな語り口での問いかけやお説教はとても魅力的で、観ているほうは思わず聞き入ってしまいます。
 ここ数年、日本でも看護者・介護者の受け入れや、日系ブラジル移民の問題を通して、やっと「移民」が問題化されてきました。行政でも、対応策が次々と発表されています。しかし、いまだに日本社会において「移民」という言葉は抽象的な外国人の集団のイメージにすぎません。
 「日本を出てブラジルで生活している人たちがいること」と「その人たちの子どもや孫が現在の日本で生活していること」との二つをつなぎ合わせるのが、紺野さんの生きてきた人生であり、移民の歴史そのものでもあります。映画では、紺野さんの姿を通して、「二つの国にわたって生きることとは何か」が描かれています。
 監督は「ルッキング・フォー・フミコ 女たちの自分探し」を撮った栗原さん。ウーマンリブの担い手だった女性たちを訪ね歩いて、インタビューをしたドキュメンタリー映画です。こちらも、併せてお勧めです。

『ブラジルから来たおじいちゃん』
8月22日より よこはま若葉町多文化映画祭にて上

場所 シネマ・ジャック&ベティ
横浜市中区若葉町3-5-1 電話 045-243-9800
京浜急行黄金町駅5分、バス・市営地下鉄阪東橋駅
分、JR関内駅15分

料金 一般 1,300円、大専シニア 1,000円、高校生以
下 8,00円

8/22(土)   17:00
8/23(日)  19:00
8/25(火)  15:00
8/27(木)  17:30
8/28(金) 19:00

いずれの日も、ホベルト・マクスウェル監督『愛しき
祖国、ブラジル』19分との併映。
22日(土)と25日(火)の上映後に、両監督の
トークあり。25日(火)には同劇場カフェシアター
にてエリオ・イシイ監督『ペルマネンシア』の上映あ
り。


『ブラジルから来たおじいちゃん』 アンコール上映

9月5日(土)から18日(金)連日 午後3時より
渋谷 UPLINKX
150-0042 渋谷区宇田川町37-18 トツネビル2F 電話
03-6825-5502

料金 当日 1,500円、学生・シニア 1,000円

9/5(土) 監督舞台挨拶あり
9/6(日) ゲスト:高橋幸春(ノンフィクション・ラ
イター、著書『蒼茫の大地』、『日系人の歴史を知ろ
う』他)
9/12(土) ゲスト:小林あけみ(群馬県太田市立野
沢小学校国際教室担当)
9/13(日) ゲスト:ケペル木村(ブラジル音楽研究
家)