蜷川幸雄「蛇にピアス」

 小説である金原ひとみ蛇にピアス」が映画化された。

蛇にピアス

蛇にピアス

金原さんが、2004年に芥川賞をとったときには、「ヒョエー」と思って、読んだのを覚えている。ついでに、これが過激な作品だという人は、読み手の頭には、「これを書いたのは19歳の女の子。しかもけっこう美人」ということがよぎるからなんだろうな、と思った。基本的には、谷崎の「刺青」へのオマージュとなっている。
 なので、蜷川さんが映画化すると聞いたときは、「ぴったり」と思ったのでした。蜷川さんは、こういう不安定でバランスのとれない、美しい(←これ重要)若者を描くのが上手い。10代の、性的なことに興味を持ち、どんどん強い刺激を求めていき、大人を圧倒してしまうところと、突然、幼い生活観で大人を唖然とさせるところを、うまく捉えた作品だった。
 ストーリーとかは、ほとんどどうでもいい。基本的に、台詞は棒読み。しかし、若者の美しさを愛でる趣味があれば、楽しめる。エロは、確かに暴力的*1でSM描写があって強烈。しかし、どこかしら昭和の香りが漂い、日活ポルノっぽくなっている。そういえば、主役の吉高由里子も、昭和顔だしなあ。現代の若者の刹那的な生き方、というよりは、性と生きる意味を求めて彷徨する青春を描いた作品。蜷川さんは、どこかしら、「若者は変わったって言ってるけど、根っこのところは同じだ」という風に見ているように思った。
 アイドル映画*2なので、観る人はそのつもりで、観たほうがいいと思う。

*1:レイプに近い描写なので、要注意かも。

*2:でも、私は「青の炎」のほうがいいと思ったな。それは吉高さんより、松浦さんのほうが好きってことかもしれんけど。