- 作者: やまじえびね
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2008/08/08
- メディア: コミック
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レイプされた女性と、恋人を殺されたゲイ男性の間に芽生える恋を、静かな筆致で描いている。レイプトラウマや、そこからの回復について、真摯に向き合っている物語である。被害後も、日常生活を送ろうと、懸命に自制を試みる主人公の姿が切ない。やまじさんが用いる、独特の白い画面構成が、被害者の陥る社会からの孤立感を際立たせている。
しかし、対照的に、ゲイ男性の描写はわかりにくかった。少女漫画に登場しがちな、レイプされた後に助けてくれる、<清潔な>男性の風合いも感じた。「彼は決して私に欲情しない」ということが、ゲイであることに担保されているために、被害女性とゲイ男性は信頼関係を築いたようにも読める。そして、信頼関係が築けた後に、性的関係に移っていく展開は少しご都合主義にも感じた。
そのため、ラストの結末は、物足りないものとなってしまった。二人の関係の落ち着き先は、それ以外には考えられなかったのだろうか。また、この関係であれば、ここから先こそが二人にとっての、本当の地獄である可能性もある。この先を、ぜひ描いて欲しいと思った。
遠回しに書いたのは、ネタバレはしないほうがいいかな、と思ったからです。とてもいい作品なので、オススメです。やまじさんは、レズビアン漫画をたくさん描いているイメージがありましたが、こういう作品も良かったです。