谷川史子「くらしのいずみ」

くらしのいずみ (ヤングキングコミックス)

くらしのいずみ (ヤングキングコミックス)

またまた、地味な漫画。結婚にまつわる短編オムニバスと、表題になっている、これまた結婚にまつわる短編を収録している。
 私が谷川さんの漫画を初めて読んだのは、小学生のときに買っていた「りぼん」で連載していた「くじら日和」である。
くじら日和 (りぼんマスコットコミックス)

くじら日和 (りぼんマスコットコミックス)

当時から、大変地味な作風であった。当時は、この人の漫画の何がおもしろいか、さっぱりわからなかった。なぜなら、谷川さんの漫画は、思春期以降のヘテロ女子が抱きがちな妄想を作品にしているからだ。
 たいしてカッコよくも、稼ぎがよくもない男の子とが、自分のことだけをひたすらに愛してくれる。どんなにダメな自分も受け入れて、にこにこしていてくれる。なんていうか、ヘテロ男子の多くが描く「お嫁さん」みたいな男の子が登場するのだ。「私の自己肯定をしてくれる男の子」という、ヘテロ女子にとっての王道の妄想と、「陰から僕のフォローをしてくれるお嫁さん」という、ヘテロ男子にとっての王道の妄想がドッキングして、大変都合のよいファンタジーができている。そして、谷川さんは、女子にとって「こうありたいな」と思うような、媚びない頑張り屋さんの女の子を描くのが上手だ。それに同一化する私は、なんか自分まで「かわいい女の子」になった気分がする。
 私にとっては、ポルノグラフィや、「やおい」についての愛着を語るより、谷川ファンであることを語るほうが、ちょっと恥ずかしい。欲望が駄々漏れである。