【震災】女性やセクシュアルマイノリティに配慮のある支援、他

 昨日起きた、「東北地方太平洋沖地震」では、Twitterを中心に多くのソーシャルネットワークサービスでの情報交換が行われました。マスメディアの情報よりすばやく、草の根での情報提供や励まし合いが行われました。特に東京地方ではケータイでの通話やメール送受信が不可能な中、twitterがアクセス状態にあったので、重要なツールになっていたようです。
 その中でも、やはり女性やセクシュアルマイノリティ、障害を持った人々、薬の服用が必要な人々、日本語での会話・読解が難しい人々に対する配慮のある支援を求める投稿が繰り返し流されました。これは、行政に対応を後回しにされがちなマイノリティへの注意を集める、重要な行動だったと思います。
 その一方で、災害後の性暴力増加への注意として、自衛を呼びかける投稿も数多く見られました。もちろん、性暴力を防ぐことは大変に大事なのですが、私は以前から自衛を求める声に対して、疑問を呈してきました。

「性暴力は自衛可能か?」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20091208/1260272432

緊急事態であれば、余計に、性暴力への恐怖を感じる人たちはたくさんいると思います。しかし、普段の生活以上に、家に帰れなかったり、電気がつかなかったり*1する生活では、居住や交通の面で物理的に自衛したくてもできないことが多いでしょう。安全な空間が確保できないからこそ、緊急事態なのです。また、精神的にも疲弊し、自衛する気力すら奪われ、普段なら強く拒否できるような暴力的な誘いが断れないこともあると思います。もちろん、性暴力は防ぐべきですが、被害にあう人がその対策をできるとは限りません。
 そこで、重要になってくるのは、被害を防ぐこと以上に、加害を防ぐことです。一番大事なのは、性暴力にセンシティブな空間を作っていくことです。緊急事態では、性暴力(特に親しい人同士でのハラスメント)は「些細なこと」とされかねません。災害後は、個人的な生活環境が災害によって変わってしまうのはもちろん、職場での業務にも災害関連の問題が起きますし、マスメディア・ソーシャルメディアはもちろん個人同士での会話でも災害の話題が出続けます。生活のすべてが災害を中心にまわることになります。ストレスもたまりますし、他人に対して甘えたい・攻撃したいという気持ちも高まります。(子どもはもちろんですが、大人もそうです)こうした状況では、普段は「許されない」というような行動が、<非常時だから>ということで見過ごされがちです。また、被害にあった人も、相談しようにも、周囲にその余裕がなかったり、本人自身が被害を重大なものだと捉えられず、一人で抱え込みやすくなります。こうした状況を、念頭におき、性暴力についてNOをいったり、相談したりしやすい雰囲気を作るよう、少しでも努力をすることは性暴力を防ぐことにつながると思います。
 災害後に「性暴力の問題が起きやすいこと」と、「性暴力が起きないように自衛を求めること」との間には大きなギャップがあります。ただでさえ、ヴァルネラブルな状態におかれやすい被災者に、被害にあわないように自衛を求めることは負担になることもあるのです。そのことは配慮したほうがよいと思います。
 次に、もう少し組織だった性暴力を防ぐ対応があります。これは、災害直後から数日後、さらに長期にわたり、避難している人たちが家に帰れない状況にあるときの避難所運営としての対応策です。女性と貧困ネットワーク*2からMLにて情報提供いただきました。許可を得ていますので、以下に転載します。

女性と貧困ネットワークからの情報提供です。
電力を使っていることが加害的になってしまっている状況、さらにいろいろな情報が錯綜している状況ですが、できるだけ女性の立場の人の力になる情報を発信していきたいと思っています。
とりわけ北関東・東北地方の皆様の力となる情報を発信できればと思っています。

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Gender Disaster Network のソースブック

英語(海外の経験と国連防災計画の推奨事例) 
災害とジェンダーに関する現場マニュアル集、グッドプラクティス集などあり。大量にあるので、要望があれば、目的に応じて適切な資料を選定して示します。
http://www.gdnonline.org/sourcebook/
(緊急救援の国際協力においては、災害時には女性・女児への
暴力は必ず起こるものとして対処することが、今や常識となりつつあ
ることなど)

ウィメンズネット・こうべの「災害と女性」情報ネットワーク

国内サイトとしては最も充実
http://homepage2.nifty.com/bousai/index.html

第46 回(2002年)国連婦人の地位委員会の合意決議(和訳)

防災復興に男女が共に参画し、災害時の女性・女児のへの
暴力防止・訴追の重要性にふれている。
http://www.gender.go.jp/fujin_chii/chii46-goi-2.pdf

現段階で重要なこと(すでにみなさまから指摘されていることへの追加)

1)可能な限り、被災者と経済的被害の統計を男女別で把握しておくこと。
(今後の支援や復興に意味ある資源配分をするために不可欠だが、なぜか死者数は報道されてもその性別は報道されない。阪神淡路では高齢者女性の死亡率は男性より非常に高かった。)

2)避難所での役割分担として、女性に子供や高齢者の世話が当たり前のように任されるようにしないこと。
(労働負担が増えることで女性が政策決定にかかわる余力が減ってしまい、避難所を離れられないため職場復帰も遅れ、ストレスが集中する。)

(文責)江藤双恵

また、「大分県生活環境部 県民生活・男女共同参画課が「女性の視点からの防災対策のススメ」(19年2月発行)には「避難所生活での工夫」が掲載されており、避難所の設営の際には大変参考になるようです。

 Twitteerでは、マサキ@cMasakさんが、継続的に情報発信をしています。マサキさんは性暴力について以下のようなツイートをしています。

災害時に性暴力が多発することがあります。また、男性同士の性暴力も存在します。異性愛男性「による」同性愛男性「をターゲットとした」性暴力です。災害時はプライバシーが守られにくい状況ですので、同性愛であることがバレやすくもなります。被災者本人、周囲の人々、救援者は注意を!
http://twitter.com/#!/cMasak/status/46153596772941824

さらに、マサキさんは有志がアイディアを出し合って「被災地にいるレズビアン、トランス、バイセクシュアル、ゲイの人々が、どのような救援活動を望んでいるか」をまとめる「被災地のLGBTが望むこと」という文書作りを始めています。以下のように紹介されています。

救援活動を行う人々に配布するための文章を作っています。

いま死ぬか生きるかの時にLGBTであることは二の次かもしれない。
でも被災地のLGBTにとっては、これから数ヶ月(かそれ以上)の日常は「避難生活」になります。
そんなLGBTのために救援者は何が出来るのか。みなさんのアイディアをください。

以下は暫定的な案です。書き込み、修正よろしくお願いします。
プリントして現地で配布出来るようにPDF形式にする予定です。私だけではアイディアが足りません。どうか、ご協力お願いします。
配布先は、救援団体・救援部隊・救援施設、そしてその他個人の救援者です。

上の「編集」をクリックすると、この文章を直接編集出来ます。
一番下に何か書き込むだけでもいいですし、突っ込みがあるところに直接何か書いてくださっても構いません。
出来るだけ多くの方の意見を伺いたいです。よろしくお願いします。

3月16日(水)の午前9時までに出そろったものを文章にまとめて、A4サイズ1枚程度のPDFにまとめ、救援団体や施設、個人に拡散をして行きます。
A4にまとめきれないものは、ロングバージョンをネットに公開し、希望者が読めるようにします。

「被災地のLGBTが望むこと」
http://w.livedoor.jp/saigai_lgbt/

上記のような情報収集・拡散や、文書作りの活動が始まっています。

 また、性とは少し離れた話題ですが、学生ボランティアの集まりも本日、同志社大学にて行われました。*3200人を越えるのではないかという学生が、「自分たちができること」についてディスカッションし、会場は大変な熱気に包まれていました。これは、ツイッターでの呼びかけで「何かしたいが、何をすればいいのかわからない」という学生たちが集まった有志の会です。技術も専門知識もない自分たちにできることは何かを考え、適切な支援をしたいという誠実な思いを持って、立ち上げられたようです。ツイッタでは今も「#for311kns」というタグでやり取りが行われています。

http://twitter.com/#!/search?q=%23for311kns

集まりの中心人物のEmm@em35maさんは、19歳で、次のようにTwitterに投稿しています。

私個人が何よりも考えているのは被災地の方々のために何が1番か。学生の力をいかに背伸びではなく、最大化できるか。そのためには再考が必要です。時間がない中、考え続けます
http://twitter.com/#!/em35ma/status/46511609610371072

「安易にボランティアに行くと、現場では逆に邪魔をしてしまう」というような批判に対する、学生の側から応答ではないかと思います。

 それから、寄付をしたいと考えている人たちも多いと思います。私も知人の情報で知ったのですが、以下の団体があります。

特定非営利活動法人 ゆめ風基金
http://homepage3.nifty.com/yumekaze/

この団体は、阪神淡路大震災以降、障害を持つ人に対する息の長い支援をしてきました。残念ながら寄付の名目で、善意の人からお金を騙し取ろうとする団体はたくさんあります。ですので、安全なのは、政党や赤十字などが寄付を募る窓口でしょう。しかし、そうした募金は自分のお金の用途がわかりません。「もっと支援が届きにくい人たちへ募金をしたい」と考える人は、こうした窓口はどうでしょうか。

追記

上記学生団体がウェブサイトを作り、活動報告を出しています。

「For 3.11 Kansai」
【活動の主旨】
私たちは東北地方太平洋沖地震被災者支援のため、関西の学生によるネットワークを作ります。
http://for311kns.jimdo.com/

*1:ならまだしも、家を失ったり、愛する人を失ったりする状況にもあるでしょう。

*2:http://d.hatena.ne.jp/binbowwomen/

*3:私は参加しておらず、偶然この会を目にしました