渡辺ペコ「ラウンダバウト」(1)

 女子中学生の真を主人公にした、青春劇。女子中学生の馬鹿っぽいところがふんだんに描かれている。第五話の「ポケットいっぱいの秘密」は、性教育の話なのだけれど、よくできている。
 授業で、コンドームを配られて避妊について学習したのだけれど、真は「あたしはヒニングを使用するまでの行程と過程が知りたいんだよ」と言い出す。そこで、女子中学生の仲良しグループ5人は、AVを借りてきて、集まってみる。映像を目にして、「あんなことをみんなやっているのか」と衝撃を受ける。そして、道行く人や家族をみて、「みんなセックスしてるんだろうか?」と想像してしまうのだ。同級生とセックスする想像をした真は「なんか失敗しちゃったギャグみたいで笑うに笑えない…」と呟く。このエピソードは、具体的に行動することはないが、いつか自分もセックスをするのだ、という真の予感を、ポジティブに描いている。
 渡辺さんの漫画は、日常にミクロに迫る面白さがある。細かなすれ違いに悩む、女子中学生のみみっちさが、ちまちま盛り込まれる。恥ずかしい勘違いや、思い込みを、大人の目線で「思春期の思い出」として描く。これは現在進行形で女子中学生が「わかる!」という漫画ではなくて、その時期を通り過ぎた女の子が「そうだった!」と吹き出す漫画だ。
 私は女子中学生をもう10年以上前に終えてしまったけれど、いまだに「女であること」についてブツブツ言っている。けれど、あの女子中学生のときの、生理やセックスについての、ブツブツ言うことすらうまくいえなくて、にきびが一つできただけで学校に行きたくなくなる気持ちは、今とは比べ物にならないくらい強烈な、「女であること」に対する壁だったと思い出す。そして、その壁にぶつかったことは、辛い経験でありつつ、笑ってしまうくらい滑稽だった。あのときの、馬鹿としか思えないような、自分が女であることに対する動転っぷりは、恥じることではないのだろう。滑稽さとは、馬鹿にするためではなく、いとおしむためにある、ということを、「ラウンダバウト」を読むと繰り返し思う。