ジェンダー・センシティブな人たちに定評のある「櫻の園」を改めて読む。以前、読んだ気がするけれど、近所の古本屋で、文庫版が100円だったので買った。
女子高の演劇部の生徒たちを、思春期の女性化に対する戸惑いという視点から描いた作品。「櫻の園」の稽古という一本の軸で、オムニバス式に4人の女性徒の視点がバトンタッチされていく。セックス、生理、乳房のふくらみ、女生徒同士の憧れなどを扱っている。
私は、やっぱり吉田さんといえば「吉祥天女」や「河よりも長くゆるやかに」が好きで、「櫻の園」はそんなに面白いと思わなかった。世代の問題かもしれない。
私自身、高校時代は演劇部に所属して、私なりに女性化への戸惑いはあったが、もう少し気持ち悪い変化だった。たとえば、生理にしたって、夏場に「汚物いれ」*1を片付けるときにかぐ血の腐敗臭*2への嫌悪が大きかった。性欲もあったが、なにせやおいが好きだったので、男性が男性にレイプされる構図で興奮する自分を、どう捉えればよいのかわからなかった。男の子と付き合ったって、とてもセックスなんてする雰囲気でもなかったし、自分の性器を見て「こんなものみせたくない」*3と思い、「こんなとこに入るわけない」と思った。とにかく、漫画やテレビに出てくるセックスシーンと、自分の性器や生殖のサイクルが一致すると思えなかった。要するに、私は脳内ではがんがん性欲にまみれていたけれど、肝心の自分の体をセックスに使うことなんてイメージできなかった。*4
それに比べると、「櫻の園」の女性徒たちの悩みは、あまりにも観念的で美しすぎた。多分、10代のころに読めば、自分と同一化して、「私もこうだわ」と思っただろうが、さすがに今は無理。もしくは、もっと私より上の世代の人たちは、セクシュアリティについて、こういうふうに美しく悩んだのだろうか。
逆に男性は「櫻の園」を楽しく読めると思う。解説で映画監督の中原俊が解題していて、それ自体は上手くやっていると思ったが、読んでいていい気分ではなかった。中原さんは、女性の世界を垣間見たと思ったようだが、ここに私のような女は含まれていないよ、といいたくなった。男性受けのよい女性化への悩みだけが、神聖化されるのは、イヤだな。