自著への書評・レビューをいただきました。
このたび、品川哲彦先生より拙著『性暴力と修復的司法』に書評をいただきました。関西倫理学会編『倫理学研究』第49号(2019年)に掲載されております。
品川先生はこれまで、『正義と境を接するもの: 責任という原理とケアの倫理』で修復的司法とケア倫理の関係について言及されています。まさに専門分野の研究者から書評をいただくことになり、大変嬉しく感謝しております。
書評においては、私のコミュニティ概念の扱いの問題点を批判されています。この問題について今すぐにアンサーを出すことは難しいのですが、自分の弱みを明確化していただき本当にありがたく思っています。
現在、私は環境犯罪と修復的正義の研究に取り組んでいますが、そこでも「誰のどのようなコミュニティを想定するのか?」という、コミュニティ概念の問題に突き当たっています。ここで問題となるのは、動物や植物、海や空などの自然総体をコミュニティメンバーとして認めるのかどうか、です。これについては、論文の執筆を重ねて論考を積み重ねているところです。
性暴力の問題を考えている時には、私の念頭にあったのは人間だけのコミュニティでした。他方、環境犯罪の問題に取り組みはじめ、人間以外(non-human)を含むコミュニティの可能性を検討していくうちに、自分自身が「コミュニティとは何か」をどう考えているのかは明確になっていくように思います。まだ、分析を始めたばかりですが、この書評でご指摘いただいた問題点について、自分なりの応答を出せるよう、研究を積み重ねていきたいと思っています。
また、アマゾンレビューに拙著について嬉しい評をいただいていますので、以下で転載いたします。
法廷は「劇場」なのだろうと思います。
裁判官や弁護士、検察官、そして被告などの役割を割り当てられた人々が、審議を進めます。
多くの場合、被害者が加害者と真っ当に話す機会は乏しいのが現状でしょう。でも犯罪被害者の中には、罰則や賠償だけでなく、加害者との「対話」を望む人たちもいます。そんな人たちにとって、既存の司法は時に役に立ちません。
こうした限界をもつ既存の司法とは異なるアプローチで、被害者と加害者に「対話の場」を提供しようとするのが、修復的司法です。
本書では、犯罪の中でもより繊細な対処が必要となる「性犯罪」に対する修復的司法の可能性を追求しています。
かといっていたずらに「対話」の意義を強調するのではなく、全ての性暴力の被害者が修復的司法に参加する必要がないことや、必ずしも「赦す」契機が訪れなくてもよいことにも注意を促しています。
繊細に論理を展開しながら、「対話の可能性」という希望を描き出しておられます。
安易に希望は述べないけれど、かといって悲観的にもならない。そんな著者の考え方がにじみ出ているように思い、好感が持てました。
このような評をいただくことが、大変励みになります。書いてくださった方、ありがとうございました。