明石書店の労使紛争のその後

 4年前の話なのですが、明石書店の労使紛争について、このブログで取り上げたことがあります。

明石書店の労使紛争について」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20100216/1266302202

その後、私のほうでは和解成立について聞いてはいたのですが、続報を書いていませんでした。
 このたび、明石書店さまより、上のブログ記事は、今も争議が続いているような誤解を与えるので削除してほしいとの申し入れがありました。
 私としては、労働運動の記録を誰もがアクセスできる場所に残していくことは大事だと思っているので、記事を削除するつもりはありません。他方、誤解を与えることは本意ではありません。
 そこで、ほかのブログに残っている明石書店労働組合の和解した時点での報告をご紹介いたします。以下はブログ「薔薇、または陽だまりの猫」に「明石書店闘争:組合側の勝利的和解/明石書店労働組合」(http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/52921492f744f55438611f1b1b2cd18e)より転載しました。

2010年12月28日、私たち明石書店労働組合東京ユニオン明石書店支部)が東京都労働委員会に行っていた一連の組合差別・組合つぶし(不当労働行為)の救済申し立てが、組合側の勝利的和解で一括解決。労使双方が今後健全な関係確立に努力することに協定しました。特筆すべきは、佐川副支部長の雇止め撤回・原職復帰、さらには会社側が組合に対して解決金300万円を支払い、過去の不当労働行為を事実上認めたことです。
今回の解決にあたり、みなさんからのあたたかいご声援・ご支援、ほんとうにありがとうございました。

★和解の概要

○組合に対する不当労働行為:会社は解決金として300万円を支払う
○佐川副支部長:雇止め解雇の撤回、11年2月1日から原職復帰(~12月31日の有期契約)。会社は解決金として給与9ヵ月分相当を支払う(既払い含む。以下同)
○山縣支部長:雇止め撤回の代わりに、解決金として給与34ヵ月分相当
○女性組合員Aさん:雇止め撤回の代わりに、解決金として給与30ヵ月分相当(高裁和解)
○大村副支部長:配置転換問題を議題に「誠実な団体交渉を行う」

★それぞれの和解について

組合側はこれまで裁判で4連続全面勝訴、それに基づいて今回の和解が成立するに至りました。

佐川副支部長の仮処分の勝利決定(東京地裁/10年7月)は、一度受け入れた1年後の雇止め予告(不更新条項)に対して、会社側が不更新条項を付けたこと自体が解雇権の濫用であり無効という、日本の有期契約で働く労働者にとって画期的なものでした。今回の和解では原職復帰と、それまでの期間の給与仮払いを解決金として勝ち取りました。
明石書店で不当解雇の社員の原職復帰は初めてで、仮処分決定とともに二重に画期的な和解です。

山縣支部長は09年4月30日に雇止め解雇され、これまで09年8月、10年6月と2度の東京地裁の仮処分で全面勝利の決定をかちとり(最初の仮処分では会社の不当労働行為も認定)、また本裁判も提訴し、組合側は11年1月18日の証人尋問に会社側証人として石井社長を申請していました。
今回の和解で復職はかないませんでしたが、有期契約で通算2年6ヶ月間働いてきた山縣支部長が解決金として給与34ヶ月相当額、すなわち既払いを除けば今後18ヶ月(1年半)分をかちとったのは、組合側勝利といっていい和解です。

私たちは08年7月23日、主に有期契約社員の待遇改善をかかげて組合結成したところ、直後から組合差別を受けはじめました。そして今回の明石書店闘争の幕開けは、会社が組合差別の流れのなかで同年末、女性組合員Aさんとのあいだで一度成立した契約更新の合意をくつがえして突如、明石書店で初めて「不更新条項」を突きつけ、その揚げ句に雇止めにしたことからでした。
Aさんは09年12月、東京地裁の本裁判で全面勝訴しましたが、会社側が控訴。高裁で和解が提案され、10年10月、一足先に会社と和解しました。
Aさんは有期契約で通算1年6ヶ月間働いてきましたが、今回の和解で2年6ヶ月相当(30ヶ月)、勤務期間を1年も上回る解決金をかちとったのは、先の山縣支部長とともに、日本で有期契約で働く労働者にとって画期的な和解内容といっていいでしょう。

大村副支部長の配転問題(編集部→製作部DTPオペレータ)については、今後、正常化する労使関係にもとづいた誠実な団体交渉で議論していくことになりました。

★今後の労使関係について

なにより会社による組合差別・組合つぶしについては、私たちが都労委に訴えていた不当労救済申立事件は昨秋10年6月に結審し、年初まもなく会社に対して救済命令が出されるという状況でした。今回の和解で会社は、組合に対して解決金300万円を支払い、過去に組合差別・組合つぶしをおこなってきたことを事実上認めました。そして、もっとも重要な今後の労使関係について、組合と会社は「労働組合法の精神を尊重し、今後は不正常な状態に陥らないよう、健全な労使関係の確立に努力する」。「円満な労使関係を築くため、(…)誠実な団体交渉を行う」という協定書に調印。
つまり会社は今後、ふたたび不当労働行為をしないこと、および誠実に団体交渉をおこなうこと、組合は労働組合としての活動範囲を遵守することに協定し、2011年の年明けとともに、労使双方が正常な労使関係確立に向けて誠心誠意、努力することになりました。

今回の争議では、何人もの組合員の雇止めや自主退社がありました。また、総勢170人の著者が労使紛争を憂慮して「明石書店の出版を考える会」を結成、会社に対して争議解決を要請したほか、多くの読者からも同様の声が寄せられました。
今回の和解をきっかけとして、健全な労使関係を築くことこそが、著者や読者の信頼にこたえ、明石書店の良質な出版活動を守ることにつながっていくのだと、私たち組合は考えています。

私たちは今後、佐川副支部長の正社員化要求とともに、健全な労使関係を築くべく着実に歩を進めようと思います。
今回の解決にあたり、みなさんからのあたたかいご声援・ご支援、ほんとうにありがとうございました。
引きつづき、多くのみなさんのあたたかいご声援・ご支援をよろしくお願いします。

  • -

明石書店労働組合
akashiunion@gmail.com

東京都渋谷区代々木4-29-4-2F
ユニオン運動センター
東京ユニオン

なお、東京ユニオン明石書店支部は、2011年夏に事実上解散したとのことです。