ニコニコ動画で政治を変えるか?

 ニコニコ動画に、共産党志位議員の質問がアップロードされている。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm2282677

 実は、私の周囲*1では話題になっていて、見逃した私は議事録でチェックするつもりだった。ところがところが、ネットで話題になっているので、驚いた。2ちゃんねるで話題に上がり、ニコニコ動画でもアクセス数が増えている。そして、50分以上ある国会中継の動画を、最後まで見た人が続出したのである。
 その理由を分析し、肯定的に捉えたブログはこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/teruyastar/20080213/1202912821
大まかに言えば、「ニコニコ動画はコメントをつけることができるので、みんなでワイワイ突っ込みながら見れて、楽しいからじゃないか」という分析である。そして、「政治に興味を持つきっかけになるんじゃないか」と希望的観測を述べている。
 id:chikiさんは、その肯定に留保をつけている。
http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20080215/p1
単にこのようなポピュリズムは「感情の増幅以上の『政治言説の成熟』を起こすような機能は持ちがたいのではないかという印象が拭えない」と述べている。
 実際にニコニコ動画を見てみると、私も楽しかった。ニコニコ動画は、みんながナンシー関になれるツールである。テレビを見ながら、「そうだ!そうだ!」と熱狂しつつ、アイロニーに「うまいこと言うな」冷却されるという行き来を楽しむ。内側に取り込まれつつ、外側の視点を持てるため、まるで自分はメディア全体を観察できているかのような感覚を持つことができるのだ。
 さらに、横で見ていた同居人が「ハーバーマスがあんなに格好よく言った公共空間も、実現されるとニコニコ動画かあ」とぼやくので、余計に面白かった。ある社会学者が「崇高な理念は、実現されると、まったく陳腐なものができあがる」と言っていたが、まさしくそれである。私もこれを公共空間と呼ぶのは悲しいが、これこそが、多分、公共空間である。
 要するに、ポピュリズムなので、政治はよけい腐敗するかもしれない。ただ、こうやって国会中継という、解説もなにもない、まさに観察者として政治を眺めることのできる動画を、素材に議論ができる公共空間は今までなかった。chikiさんも指摘しているとおり、いいほうに転がるにしろ、悪いほうに転がるにしろ、政治との距離感は変わってくるだろう。
 私自身、ここ数年、労働に対して感じていたのは労働条件の悪化と諦めの空気である。ここ数年で立て続けに同世代の友人が離職している。みな一様に「どうしようもない」「がんばるしかない」とつぶやきながら、過重労働にあえぎ、体を壊し退職した。また、不当解雇も目にしてきた。「自己責任論」を自らひっかぶって、「他人のせいにはしたくない」「みんなに迷惑かけるから」と周囲に愚痴ももらさない。
 でも、こうやって議員が質問していくなかで、自分の待遇が不当であることを知ることができる。それを支持している人がいることがわかる。ましてや、ニコニコ動画のような、権威の小さいツールを通して、「みんなそう思ってたんだ」という連帯感を持つことができる
 繰り返すが、これはポピュリズムである。つまりは、全体主義の入り口である。決して、肯定だけして終われる話ではない。ただ、このまま労働条件が悪化を防ぎ、有期雇用が常態化することを食い止めようとしたとき、何ができるのか。
 ニコニコ動画で、政治が変わるのかは、わからない。しかし、ニコニコ動画で政治を変えよう、といっている人は(今のところ)いない。では、政治を私はたちは何で変えるのか。もちろん、現状維持がしたい人にとっては、意味をなさない質問である。

追記

 ブックマークでご指摘いただいたのですが、動画は削除されてしまったそうです。残念だなあ。再放送してくれないかな。
 

追記2

 ブックマークでご指摘いただきましたが、現在、youtubeに映像がアップロードされているようです。

*1:私の周囲では労働問題は、世間話です