「子供のためを思えば」活動費を寄付金からねん出すべきなのか?

 寄付の問題がネットで話題になっています。日本からユニセフへ募金する場合には「日本ユニセフ」を通す場合と、黒柳徹子個人口座に振り込む場合とがあります。前者の場合は、募金の一部が日本ユニセフの事務や広報などの活動に使われるため、ユニセフ本部に送られるの募金額のは81パーセントです。黒柳さんは100パーセント全額を送ります。
 この件に関して、ひろゆき*1さんが、公開質問状を出しました。

「今一番大事なのは、子供達の為に私たちもできることを考える事です。」

と仰られていますが、アグネスさんが募金先にあげている日本ユニセフ協会は、2012年度、募金の81%しか、ユニセフ本部に送っていません。

一方、ユニセフ親善大使をされている黒柳徹子さんは、募金の100%をユニセフ本部に送っているそうです。
http://www.inv.co.jp/~tagawa/totto/hope.html


子供のためを思えば、100%をユニセフ本部に送っているユニセフ親善大使の黒柳徹子さんを薦めるべきではないでしょうか?


さて、私からの質問は、1点です。

・募金額の100%をユニセフ本部に送っている黒柳徹子さんの振込先口座を紹介しないのはなぜですか?
http://hiro.asks.jp/90907.html

最後の公開質問の答えに関しては「日本ユニセフは募金の一部を活動費にしているため、自分の口座を通してほしい」ということになるでしょう。「中抜きしたいから」とも言えるかもしれません。問題はその前の公開質問ではない部分です。
「子供のためを思えば、100%をユニセフ本部に送っているユニセフ親善大使の黒柳徹子さんを薦めるべきではないでしょうか?」
この仮定は「子供のためを思えば」という枕詞がついています。
 短期的なスパンで子供のことを思えば、100パーセントのお金を寄付する黒柳さんの活動のほうが額面上よいように見えるかもしれません。しかし、ユニセフは長期的に活動する団体であり、日本の事務局の継続的な広報活動により知名度をあげ、信頼を勝ち得てきました。黒柳さんの個人活動は、その長年の事務局の成果の上にあります。そして、黒柳さん個人が活動を何らかの理由で辞めた場合、ユニセフへの送金はできなくなります。
 長期的なスパンで子供のことを思えば、日本ユニセフに募金することで、事務局を維持する利点はあります。運営母体の施設が立派であることを批判する声もありますが、残念ながら団体の権威を維持する効果があります。街ビルの一室に事務所を持つ団体よりも、ピカピカのビルの団体のほうが信頼的出ると思い、寄付したい人と考える人はたくさんいます*2

 ただし、私は日本ユニセフに募金することはないです。理由は二点です。一点目は表現規制に対する政治的方針が私とは違うためです。二点目は、他の草の根団体に寄付することを優先するためです。
 子供のためを思って、寄付しようと思うとき、日本ユニセフしか選択肢がないわけではありません。4年前になりますが、寄付先を探す方法について記事を書きました。

「支援団体アクセスガイド」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20090515/1242364490

私もピカピカのビルや、芸能人で人を集めて募金を集める団体よりも、草の根で子供たちを支援している団体にぜひ寄付が集まって欲しいと思います。募金額の何割が活動費に使われるのかは団体によって違います。しかし、その割合よりも、どういった活動をしているのかに関心を持つほうが有意義だと私は思います。
 特に、一回限りの寄付ではなく、年間数千円で「賛助会員」になれる団体もあります。こうした団体であれば、年に一回〜数回の機関紙・レターが届いて、活動状況を教えてくれます。定期的にお金を払い続け、情報を得つづけることで、お知らせが届いたときの、数分でも数時間でも、困難な状況にある子どもたちのことを考えることに使えます。
 多くの人は日々の生活に追われ、「子供たちのことを考える」こともままなりません。継続した活動に、継続して寄付し続けることは、問題を考え続けることでもあります。寄付金の使われ方を考えるときに、併せて寄付の仕方も考えることも大事だと思います。

 ひろゆきさんの公開質問に関しては、ほかの批判記事も出ています。

ひろゆき日本ユニセフ&アグネス叩きについてそろそろ一言いっとくか」
http://anond.hatelabo.jp/20131114111136

*1:2ちゃんねるを立ち上げたことで有名

*2:私はいいことだとは思っていません。ビルの一室の事務局を維持する財力のない草の根の団体が、とても意義のある活動をやっていることはよくあるからです。