支援団体アクセスガイド

私が特定の支援団体の名前を、寄付先として挙げない理由

 性的虐待についての被害者を支援することについて述べた記事で、こんなご質問をいただきました。

小額ですが、寄付したいと考えております。font-daさん、信頼できる支援団体をご存知でしたら、教えていただけませんか?なかなか検索しても、引っかかってこないです。
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20090510/1241961519#c

たしかに、当事者が支援団体にアクセスする情報もままならないなか、「寄付しよう」と思ってもなかなかその団体がみつからないかもしれません。ただ、私が特定の団体名を寄付先としてブログで紹介するには躊躇があります。理由は二つです。

(1)インターネット上では、圧倒的にポルノ情報が性暴力情報よりも量的に多いこと
 ここ数年で、ずいぶん性暴力被害についての情報も、インターネットで収集できるようになりました。それでも、ポルノの量は、そうした情報を圧倒しています。ユーザーの多くも、ポルノを求めてインターネットにアクセスしています。
 その中で、性暴力被害者を支援している団体の情報を公開することは、非常に難しいです。実際に、支援団体がインターネット上で情報を公開した場合、揶揄や中傷のメッセージ、わざとポルノを送りつける、などの嫌がらせがあります。また、興味本位や、覗き見趣味でアクセスしてきたユーザーへの対応に、スタッフが苦労することもあります。
 私としては、せっかく寄付するのならば、大きな力やお金を持っている団体よりは、地味に小さく活動していたり、地域密着で頑張っている団体にお願いしたいです。しかし、そうした団体の情報を、こうしたインターネットで流すことは、かえって、団体の負担を増やす可能性もあるのです。

(2)支援団体は多種多様であること
 支援団体と一口にいっても、活動内容は多種多様です。シェルターの運営や、児童の保護を担う団体。裁判を支援する団体。大人になったサバイバーを心理的に支援する団体。被害状況を告発する団体や、政治に働きかける団体もあります。男性サバイバーや、セクシュアルマイノリティ、外国人への支援に力を入れている団体もあります。
 また、支援団体も、心理学系、フェミニズム系、当事者運動系など、志向性はさまざまです。また、アートセラピーやスピリチュアルなケアを志向する団体もあります。さらに、特定の宗教を背景に持つ*1こともあります。
 こうした団体は、一概にどこが良いとも言いにくいです。はっきりと言ってしまえば、支援する人の好みに左右されるからです。被害者は多種多様ですから、支援の目的も、支援のカラーも、多種多様であるほうがよい、ということは言えます。しかし、どれが一番よいのかは、よくわかりません。私がよいと思う支援団体も、私と違うセンスを持つ人には、わるい支援団体でしょう。

 ですので、どうすれば自力で信頼に足る支援団体にアクセスできるのかを考えてみようと思います。

本を読んでみる

 性的虐待についての知識を身につけ、どのような支援方法があるのかを知ることが一番はやいと思います。今は、大きめの本屋さんに行けば、性暴力被害者を支援するための本はずらっと並んでいます。(女性学の棚のあたりを見てみてください)手に取って見て、気に入った本がみつかれば、読んでみてください。
 こうした本を書く著者はたいてい支援団体で支援活動をしているので、巻末アクセス先が書いてあると思います。著者が信頼する支援団体のリストが載っていることもあります。また、団体がハンドブックを出していることもあります。いきなり寄付するのに不安がある場合は、リーフレットなどの資料を求めてみるといいかもしれません。
 大きめの本屋に行きにくい場合は、次の本が参考になるかも知れません。

生きる勇気と癒す力―性暴力の時代を生きる女性のためのガイドブック

生きる勇気と癒す力―性暴力の時代を生きる女性のためのガイドブック

この本は、米国で大変なベストセラーになり、日本でもサバイバー支援の名著として有名です。2007年に増補版が刊行されました。その巻末に支援団体リストがついています。

オフラインの情報を探す

 一番簡単なのは、お住まいの近くの女性会館や公共施設のチラシ置き場をチェックしてみることです。支援団体が簡単なプリントを置いています。定期的に新しいものが補充される団体は、活発に活動しているのでしょう。また、支援団体が主催・共催する講演会や勉強会が開かれています。こうした場に、参加すれば、実際に団体の人たちの顔やふるまいを見て、寄付するかどうか決められます。
 近年、「支援者養成講座」も多くなっています。もちろん、実際に被害者に接して支援することには、大きなハードルがあります。講座を受けてみて、「私はしない」「私はできない」という判断をする参加者も多くいます。*2金銭的支援だけを行う人も、立派な支援者です。対面支援の予定がなくても、講座を受けて見てもよいと思います。
 講座は、ワークショップ形式も多く、自らの発言を求められることもあります。支援の場に携わっている人や、実際に被害経験のある人も参加しています。やはり、講座の前には本などで、簡単に大枠だけでも勉強していったほうがよいかもしれません。

それでも、やっぱり……

 もしかすると「こんなことをしないといけないのか」と思うと、寄付の決意が折れてしまう人もいるかもしれません。それはそれで、私としては残念なので、一つだけ団体をあげておきます。

CAPセンター・JAPAN(子どもへの暴力防止プログラム)

CAPは、アメリカのレイプ救援センターで開発された「子どもへの暴力防止プログラム」です。日本では、性暴力被害者支援のパイオニアである森田ゆりが、1985年に紹介しました。行政からも支援を受けており、学校でプログラムが実施されることもあります。
 CAPでは、子どもたち自身が、暴力に対して「NO」を言えるようになることを目指したワークショップが開かれます。暴力から身を守るための、知識やスキルを子どもたちに伝えることが目的です。また、おとなに対するワークショップも開かれます。被害にあった子どもたちだけではなく、私たちが暮らす社会の子どもたちみんなのために支援をしている団体です。
 賛助会員になれば、ニュースも送ってもらえますし、養成講座を受ければより積極的な支援に参加できます。活動実績もある団体ですし、実践的で積極的なサポートを提供しています。とにかく、寄付をしたい、ということであれば、こちらがいいのではないでしょうか。

*1:日本では宗教を持つこと自体に偏見がありますが、必ずしも悪いこととも言えないのです。(私自身は特定の宗教団体には属していません)

*2:これは、決して悪いことではありません。冷静で勇気ある決断です。