鈴木清順『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』
大阪の九条(大阪ドームの近く)にあるシネ・ヌーヴォで『清水清順レトロスペクティヴ』(http://www.cinenouveau.com/cinemalib2007/seijun/seijyun.html)と銘打った上映が来月1日まで行われている。私は、『ツィゴイネルワイゼン』と『陽炎座』は14インチのテレビで観て、是非大きな画面で観たかったので2本観てきた。
『ツィゴイネルワイゼン』では原田芳雄*1演じる中砂にやられっぱなし。前に観たときは、今より更に若かったので、「乱暴そうで怖い」と敬遠していたけれど、メロメロになった。獣みたいに次から次へと女を食いまくり、その割りにアレコレ思い悩む姿は、現代版源氏物語でした。
私が好きなのは、青地(藤田敏八)に「お前はいいな、自由で、身勝手で」と言われた後の、中砂の微妙な表情。好きになるよね、こういう男*2、と思ってしまった。つき合いたくはないけど。
この映画は名作過ぎて、コメントするのも悩ましい。パンフレットに写真が付いてたので買ったのだけれど、そこに載っている著名人のコメントは間抜けで悲しい。変に解釈したりすると酷い目に遭う。
例えば、砂漠のシーンで中砂が亀甲縛りをされているシーンがあって、印象に残ってたし、あれはどういう意味だったんだろう?と思っていたら、原田さんがこんな話をしていた。撮影日に泥酔した原田さんの元に鈴木監督が来て、「どうしますか?」と明るく聞く。
俺は「わかんないですけど、ギリギリに縛ってください。ギチギチに縛っちゃってください。止められないから」、そんなことを言った。そしたら「それじゃあ、縄を用意しますから」みたいな感じでさ、軽いんだよね
笑)。
ええええーそういうことなんですか?という・・・。とにかく、創作のカオスの中で撮られた映画なので、矛盾や不合理も無理矢理押し流すエネルギーがある。原田さんもインタビューで語っているけれど、中砂という登場人物は彼岸と此岸の境界線をさまよっていて、人間の振り幅の限界に挑んでるような役所。言葉にしちゃうと、陳腐になるから感想を書くのも難しい。
『陽炎座』はわかってるんだけれど、今回も芝居小屋のシーンで意識が飛びました。幻想的すぎて、私の意識ももうろうとなって、気が付いたら、松田優作と共に現実に帰ってきました。映画館を出る人も口々に、意識が飛んだ話をしていたので、私だけではないみたいですけれど。