近況

 1月6日に帰国して、日本での生活を再スタートをしています。しばらくは体調がすぐれず、仕事も詰まってしまって焦りました。振り返ると、大規模な時差ボケだったのかなあ、と……頭では日本に戻ったという意識があるけど、体のほうは急激な変化が受け入れがたかったのかもしれません*1。ちなみに、帰国していちばんの印象は「太陽がまぶしい!」でした。ベルギーの薄暗い冬を過ごしていたので、日中は明るくおだやかな光が溢れる京都の冬に、しばらくなれませんでした。おかげさまで、今は冬季うつっぽい気分も去り、元気に仕事をしています。

 昨日は、私が題材になったドキュメンタリー番組がNHKで放送されました。2月4日に再放送がありますし、NHKプラスでも観れます。

www.nhk.jp

 この番組は、半年以上前にディレクターの中村さんからご依頼があり、撮影協力を引き受けたものです。とは言っても、最初からテレビに興味がなく、出るのをしぶっていたのですが*2、中村さんの率直な「あなたを撮りたい」という気持ちに押されて承諾しました。しかし、テレビの番組というのはとっても難しいものです。私も中村さんも、器用なほうではないので番組の製作は一筋縄ではいかず、新人ドライバーが崖っぷちを走るような地獄のデスロードとなりました。本当に、本当に大変でした。

 いざ放映されてみると、けっこう面白い番組になったんじゃないかと思います。私自身は、あちこち笑い転げながら観ました。いつも通りの私が登場して、いかにも言いそうなことを言っていて、飾りけのない率直な映像になっていました。旧知の友人も「普段どおりのあなたがテレビに出てきてびっくりした」と言っていました。本人は、1時間も普段の自分が動く姿をまじまじとみることになり、変な気持ちもしましたが……*3

 本の内容の朗読もしていただいているんですが、なんだか「実写化!」とか「アニメ化!」とかそんな気分で観てました。声優さんが演じてくださったからかもしれません。もともと、自分でもフィクションを書くように、自分の話を書いているのですが、それが極まって、もはや本の内容は別人の話のようで面白かったです。そう思うと、私の喋ってる映像は原作者インタビューみたいですね。ナレーションと朗読が別の方なのが、とても良い効果になってたんじゃないかと素人ながらに思います。

 製作過程ではいろいろ考えることもあり、最終的には中村さんに全てを託すかたちになりました。途中、「この人は何を考えてるんだろう」と思うこともありましたが、最終的に番組を観て「そういうことか」と納得しました。やっぱり、製作者の「想い」や「意図」は出発点になっても、完成品で相手に伝えてナンボですね。それは、テレビ番組でも論文でも同じだと思いました。

 それにしても、私もいろんな人に、好きに書くことをゆるされてきたし、受け入れてもらってきました。だから、自分も「好きに作ってもらおう」と思ったんですが、それは本当に最後の最後でやっと辿り着いた気持ちです。表現の「対象にされること」については考えてきたつもりですが、予想以上にハードだったし、自分を省みるきっかけになりました。

 そして、本が瞬く間に売れてアマゾンでは在庫切れになっています!(しばらくすれば、入荷されると思います)他方、SNSでの反響はそこまで多くなく、「違う層に情報が届いたんだな」と思いました。やっぱり強いメディアですね。

 さて、1月のはじめには、「文藝」新春号の批評特集に寄稿した論考が発表になりました。私は同人BL小説やケータイ小説の書き手と、筑豊の炭鉱の女性たちのサークル活動を、「素人の創作活動」の視点から接続することを試みています。

 そのなかでは、森崎和江の著作も引用しました。森崎の著作の復刊は、大阪府立大学の博士後期課程にいた大畑凛さんが牽引されたようです。大畑さんの森崎についての解説は大変わかりやすいです。なにより文章の切れ味が鋭く、感銘を受けました。そして、同窓だと気づいて少し嬉しかったです。地味な大学ですが、面白い仕事をする人たちが先輩、同期、後輩にいつもいます。私も、研究を頑張っていきたいと改めて思いました。

 

*1:ベルギーが楽しくて、日本に帰りたくなかったし!

*2:動画って、なんだか恥ずかしいしね……今も恥ずかしいです。

*3:「光で眉尻とんじゃってる、もっと濃く描けばよかった」とか、しょうもないこと思いますね。