栗田隆子「呻きから始まる 祈りと行動に関する24の手紙」

 

 友人の栗田隆子さんが、新著を出版された。栗田さんは、1980年代後半、日本がいわゆるバブル景気に湧く時代に青春期を迎えた。学校制度に違和感を持ち、社会への関心を寄せるなかで、高校に入学するとどうしても学校に行けない「不登校」の状態に陥る。自分でもコントロール不可能な「不登校」という状況と格闘するなかで、キリスト教の信仰に入っていく。神の声を聞くという体験に救いを得ながら、栗田さんは再び社会を問い、運動のなかに飛び込んでいく。そのなかで、疲弊しうつになりながら、再び神に出逢い直す。この本は、月刊誌『福音と世界』の連載がもとになっており、キリスト者としての栗田さんの考えが綴られるとともに、1980年後半から現代に至るまで続く労働や貧困、差別の社会問題が語られ、両者が重なりながら語られていく。キリスト者だけではなく、なにかをよすがに生きてきた人たちに響く本だと思う。