近況

 先月の週刊金曜日3/25号に、太田明日香さんが書評を書いてくださっています*1。「個別的な体験を描きながら、性暴力の総体を描きだす」という見出しの記事で、とても嬉しい紹介のされ方でした。

 パラパラ読んでいると、岩波書店の「世界」の売上が2年連続で伸びているとの記事がありました。私も2020年3月号でインタビューの記事を書かせてもらいました。その後、インタビューしたナヤ・アービターさんの訃報を聞き、お話を伺う最後の機会だったのだなあ、と寂しく、でもありがたい気持ちになりました。若い層の読者が増えているそうで、なによりです。

 私も、「週刊金曜日」にせよ、「世界」にせよ、原稿をご依頼いただくのは30-40代の同世代の編集者が多いです。そんな時代なんだなあと思います。ちなみに、私がいただく原稿依頼の9割くらいは、自作のウェブサイトのメールフォームから受け取っています。それも時代だなあ、と思います。聞くところによると、編集者とコネを作るためのコミュニティなどが東京にはあるらしいのですが、関西に住んでいましたし、そのあとベルギーに引っ越したので、私の中では都市伝説のまま終わりました。

orikakom.com

 知人から教えてもらったのですが、先日、10年前の亀岡交通事件についてのシンポジウムが、被害者遺族を招いて開催されました。タイトルは「絶望とともに歩んだ先に」です。

www.kuas.ac.jp

 ご遺族の10年間の道のり、そして被害者支援と加害者更生についての率直な意見交換が行われたと聞いています。「被害者の求める助け」と「実際の支援制度」にずれがあることや、加害者に対する葛藤、それでもなぜ更生を求めるのかなどの、話題が出たとのことでした。これまで被害者支援と加害者支援の断絶はとても深く、ときには被害者がどちらかの立場を支持することで引き裂かれることもありました。私は、シンポジウムの話を聞きながら、新しい一歩が踏み出されたのではないかと、思いました。個人的には、生き残った当事者は立ち止まっていられないから、前に進まざるを得ないのだ、それを望んでも望まなくても、という想いを抱いています。

 シンポジウムを企画した京都新聞の広瀬一隆さんは、記者として10年間、ずっとご遺族の取材を続けてきました。事件の当事者の「その後」を追うことは、地方紙の大切な役割だと思います。シンポジウム後については、こんな記事が出ています。

www.kyoto-np.co.jp

 広瀬さんが、事件の取材をまとめた著書は、いま発売中です。期せずして、私の本と同時期に出版されることになりました。広瀬さんとは旧知の仲で、昔、当事者性について議論していて喧嘩になりました。相変わらず、考えも立場も違いますが、似たような話について時間をかけて、粘り強くやっている方なんじゃないかとは思います。

 これから開催のイベントのお知らせです。環境問題と修復的正義についての連続セミナーです。オンラインで無料ですが、事前に登録が必要です。英語ですし、時差があるので視聴は大変かもしれませんが、特に5月31日のブルーナ・パリの「The Art of Repair: Bridging Artistic and Restortive Responses to Environmental Harm and Ecocide」は注目です。私は参加予定です。

www.staff.universiteitleiden.nl

 また、ヨーロッパ犯罪学会の開催中に、関連企画として「Environmental Crime & Gender」が企画されています。こちらは報告者も募集中です。私は聴講者として参加予定です。

www.eur.nl

 個人的な近況としては、移民局からやっと必要な書類(Annex46)が届きました! 近日中に住民カードを更新予定です。今回は、移民局が難民の申請を優先したため、一般の滞在許可の発行は遅れたということで、それはしょうがないかな、と思いつつ……何もなくても、君たちはいつも遅れるよね、という気持ちもあります。無事に更新できるのですから、結果オーライではありますが。

*1:日本から転送してもらったのでご紹介が遅れました