KISS9月25日号

 講談社の漫画雑誌「KISS」を買ってきた。ついに、日下直子「大正ガールズエクスプレス」のサナトリウム編が終結

大正ガールズ エクスプレス(4) (KC KISS)

大正ガールズ エクスプレス(4) (KC KISS)

以前にも、この漫画のギリギリっぷりを紹介した*1けれど、今回もギリギリの着地だった。

*以下、ネタバレあり

 サナトリウムで暮らす少女ミヤコが登場。生意気なミヤコは、千世とよし子と親しくなり、心を開き始める。しかし、ミヤコには死期が迫っていた。女性の権利を獲得し社会を変えたいと思っていた千世は、目の前の少女一人を救えない自分に思い悩む。千世とよし子はミヤコのために、ミヤコを主人公とした絵物語(少女マンガ)を製作する。フィクションの中のミヤコは、ミヤコが夢見た、活発な少女だった。ミヤコは母親にその絵物語を読んでもらい、安らかに眠る。
 あらすじだけ読めば、どう考えても陳腐になりそうな展開で、手に汗を握って毎号楽しみにしていた。千世は「私はどうすればいいんだ?」と思い悩むのだけれど、作者の日下さんも描きながら「どうすれば千世はミヤコを救えるんだろうか?」と思い悩んでいたんじゃないだろうか。「どうすれば、死んでいくミヤコの心を動かせるのか」という葛藤が、ダイレクトに飛んできた。それだけに、今号のミヤコを救うことになる絵物語が重要だった。その結果だけれど、今号のよし子の描いたミヤコは生き生きとしてかわいくて、成功だったと思う。丁寧な線で、よし子がどれだけミヤコに思いをこめて描いたのか、絵柄で伝わってきた。ああ、無事着地してよかった、と心から思った。
 しかし、サナトリウム編で、よし子と千世が少女マンガを発明したようなエピソードが挟まれてるけど、これは大丈夫なんだろうか?これから先、どう展開していくのか、まだまだ心配。楽しみにしてます。

 「KISS」は、小山田容子「ちっちゃな頃からおばちゃんで」も楽しみ。

ちっちゃな頃からおばちゃんで(1) (KCデラックス Kiss)

ちっちゃな頃からおばちゃんで(1) (KCデラックス Kiss)

人気作の「ワーキングピュア」のスピンオフ作品。ひきこもりの青年や、母親に依存されぎみの娘、認知症の父親の介護に悩む青年など、繊細な問題を、あまり重くならず、日常の中で地味に起きるエピソードにまとめている。

ワーキングピュア(1) (KC KISS)

ワーキングピュア(1) (KC KISS)

あとは「銀のスプーン」「バラ色の聖戦」「ガキのためいき」。

銀のスプーン(1) (KCデラックス)

銀のスプーン(1) (KCデラックス)

バラ色の聖戦(1) (KC KISS)

バラ色の聖戦(1) (KC KISS)

ガキのためいき(1) (KCデラックス)

ガキのためいき(1) (KCデラックス)

「ガキのためいき」はASの沖田さんが自伝的に子どもの頃のエピソードを漫画にしている。切ない話や苦しい話も多いんだけど、独特な絵柄でギャグにされていて、笑ってしまったりする。

 つまらなくなってしまったのが、米沢りか「カツ婚!」。「三十婚」のスピンオフで、恋愛のハウツーを描いたエッセイ漫画みたいな作品。「三十婚」では、それぞれのキャラクターが、個人的な背景がある中で、恋愛テクニックを使って男性と付き合おうとして、上手くいったり、いかなかったりしてドラマを盛り上げていた。でも、そのテクニックだけ抜き出したため、よく女性誌に出ている恋愛相談コーナーみたいになっている。今号は「男を正論で追い詰めてはいけない」というテクニックの話。男をたてると良いそうです。
 しかし、実際にはそんなの相手によるに決まってる。議論をして、女性に理があると思ったら、気持ちよく納得する男性もいる。そうでない男性もいる。自分がどういう人と付き合って、どういう付き合い方をしたいかによって、判断すればよいことだろう。私の場合は、「この人は男性だからこうすれば、こういう反応をするはず。だから、こういうふうに振舞おう」としか思えない相手とは、わざわざ恋愛したくない。その人を目の前にすると、自分の考えを率直に伝えたいと思う相手と付き合いたい。

カツ婚! 恋に喝!篇 (ワイドKC Kiss)

カツ婚! 恋に喝!篇 (ワイドKC Kiss)

30婚 miso‐com(1) (KC KISS)

30婚 miso‐com(1) (KC KISS)