「京都府児童ポルノの規制に関する条例(仮称)(案)」が発表されました

 9月15日に、これまで何度か取りあげてきた京都府児童ポルノ規制案のとりまとめが発表されました。パブリックコメントと、それに対するレスポンスもアップされています。

京都府児童ポルノの規制に関する条例(仮称)(案)」に対する府民意見募集の結果について
http://www.pref.kyoto.jp/seisho/1315793248706.html

案についてはこちらにPDFで出ています。

京都府児童ポルノの規制に関する条例(仮称)(案)
http://www.pref.kyoto.jp/seisho/resources/1309827428947.pdf

条例の核となる、廃棄命令と罰則の部分は以下です。

(2)児童ポルノの廃棄命令等
1. 知事は、児童ポルノ(法第2条第3項第1号及び第2号の児童ポルノ並びに同項第3号の児童ポルノのうち衣服の全部を着けないもの又は性器若しくは肛門を写したものに限ります )を所持したり、 。 当該児童ポルノに係る情報を記録した電磁的記録を保管する者に対して、当該児童ポルノの廃棄又は当該電磁的記録の消去を命じることができることとします。
2. 知事は、?の児童ポルノ又は電磁的記録を所持・保管していると認められる者に対し、立入調査を行うことや資料の提出を求めることができることとします。
(3)罰 則
1. 対償を供与し、又はその供与の約束をすることにより児童ポルノ(法第2条第3項第1号及び第2号の児童ポルノのうち13歳未満の児童が被写体であるものに限ります )の提供を受けた者に罰則を科 。 すこととします。当該児童ポルノの情報を記録した電磁的記録の提供を受けた者についても同様に罰則を科すこととします。
2. (2)の?の廃棄命令等に違反した者に対して、罰則を科することとします。

上記のポイントは、主に三点です。
(1)廃棄命令対象になるのが「(法第2条第3項第1号及び第2号の児童ポルノ並びに同項第3号の児童ポルノのうち衣服の全部を着けないもの又は性器若しくは肛門を写したものに限ります )」という点
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の第二条第三項というのは以下です。

一  児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二  他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

この条例で廃棄命令対象になるのは、一号二号のように「性交又は性交類似行為に係る」か自分や他人の「性器等に触る行為」、もしくは三号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とみなされるとした場合で「性器若しくは肛門を写したもの」です。つまり、ただ「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とみなされる場合は、廃棄命令対象ではありません。
(2)罰則の対象となるのが「法第2条第3項第1号及び第2号の児童ポルノのうち13歳未満の児童が被写体であるものに限ります」である点
上の定義と照らし合わせると、一号二号のように「性交又は性交類似行為に係る」か自分や他人の「性器等に触る行為」のうち、13歳未満の児童が被写体のものということです。そして、これは第3号は含まれませんから、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とみなされても、罰則の対象にはならないということです。
(3)罰則の対象となるのが「対償を供与し、又はその供与の約束をすることにより児童ポルノの提供を受けた者」という点
「法第2条第3項第1号及び第2号の児童ポルノのうち13歳未満の児童が被写体であるもの」を所持しているだけでは、廃棄命令の対象になるだけで、罰則の対象にはなりません。一番わかりやすいのは、有償で買う場合が罰則の対象になるということです。ここに、金銭の授受など有償性を具体化しないのは、大人が子どもから食品や商品などと交換に児童ポルノの提供を受ける可能性見込んでいるからです。
 というわけで、これまでの検討会を踏まえた上での、よく練られた案のように私は思います。これまでの検討会の経緯は何度か簡単にまとめました。↓

京都府児童ポルノ規制条例」検討会議記録
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20110212/1297522756

京都府児童ポルノ規制条例検討会議検討結果報告書」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20110821/1313899934

難点を言えば、被害児童に対する支援の項目でしょうか。

2 被害児童に対する支援
京都府は、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、その受けた影響から身体的・心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長し、生活することができるよう、必要な支援に努めることとします

具体的な案は入っていません。「支援をする課を立ち上げる」くらい言ってもらえると「おおっ」となるんですが、ワクだけ作っても中に入れるものが十分にないのは、支援業界から漏れ伝え聞いてるんで言及されただけマシということかもしれません。「児童相談所に通達出して終わり」とかは、やめてほしいですね。
 条例に関する批判もあるようです。

京都府児童ポルノ規制条例は「てんたま氏」のレポート通りの悪法に!
http://otakurevolution.blog17.fc2.com/blog-entry-1774.html

実は私は上の記事がこの条例のどの点を指して危険視しているのかわかりませんでした。文中に

児童ポルノ規制は説明しても理解できない人は一生理解できない案件。
頭の良し悪しではなく柔軟性の問題、リアルに生きるか死ぬかの悪法なんですが・・・。

と書いてあったので、柔軟性が足りないのかもしれません。確かに、このブログ読んでて私が柔軟だと思う人はあまりいないと思うので、合ってるような気もします。なぜ実在する児童が被写体の児童ポルノに対して、柔軟でいないといけないのか、理由もわからないですしね。「18歳以下の人たちが、性行為をしたり性器に触ったり、性器を見せたりする画像を捨ててください」そして「13歳以下の人たちが性行為をしたり性器に触っているものを、何かと交換で入手したら罰します」というのは、児童の人権の面から見ると当然だと私は思います。*1

*1:というと、必ず「ポルノ検閲派」だと思い込んでコメントする人がいるのですが、私は「子どもと大人」や「実写とヴァーチャル」はわけています。私は「東京都条例には反対、京都府条例には賛成」という立場です。都条例批判はこちらなど→http://d.hatena.ne.jp/font-da/20100321/1269174840