「離婚・離別後の男女共同子育て」

 私は上記事にも挙げた、女性学研究会の会員になっているので、ニュースが送られてきます。今月は、8月例会「離婚・離別後の男女共同子育て」の報告が掲載されていました。
 数年前から、バックラッシュと呼ばれるようなDV防止法に対する抗議活動をする人たちの動きが出てきています。そのときに、彼らによって、一番の問題として提起されるのは「離婚後の面会交流」です。もちろん、DV防止法は必要ですし、これまで以上に被害者保護のための枠組みを考えなければなりません。この問題を政治利用し、DV被害者支援をつぶそうとする勢力に向けては、批判がなされるべきです。しかし、同時に、離婚後に面会交流を阻まれる親がいる、という問題自体は、看過できません。
 そこで、Kネット(共同親権運動ネットワーク)の協力を得て、埼玉のヌエックで「離婚・離別後の男女共同子育て」例会が実現しました。宗像充さんが基調講演を行い、フロアで討議がなされたようです。
 宗像さんの報告によれば、離婚した場合8割、裁判を経由した場合には9割が、女性に親権がいくそうです。だから、絶対数では男性のほうが圧倒的に、子どもに会えなくなる当事者が多いはずです。ところが、会を開くと、3割、4割は女性の参加者が占めるそうです。少し古い1973年のデータによるものですが、子どもと引き離された母親は、同じく引き離された父親より、面会を阻まれる比率が高くなるそうです。また、男性の「子どもに会えない父親」は以前より認知されてきましたが、女性の場合は「子どもを捨てただめな母親」と言われがちで、不可視化されてきたかもしれない、とのことです。海外では、共同子育てをいかに成立させるか、という問題が議論されてきました。宗像さんは、その議論を踏まえて共同親権を提案しています。宗像さんは次のように述べています。

(略)今も昔も、子育てに普通にかかわる父親は確実にいたはずである。単独親権制度のもと、親権を奪われ、愛する子どもと会うことを妨げられ、精神的に破壊的な打撃を受ける親たちの姿は公然化してこなかった。こういった親たちの存在を無視することは、育児への男性の参加を、運動だけでなく行政側も推進している今日、いっそう難しくなっている。離婚したからといって、その日から「親じゃないから」と言われても納得しようもないだろう。海外では議論され尽くしてきた親と引き離される子どもの、成長における影響など、話題にすらされてこなかった。子どもの4.5人に一人が、成人するまでの間に親の離婚を経験しているにもかかわらずである。

「日本女性学研究会ニュース VOICE OF WOMEN」No.306、2009年11月5日、10ページ

 まだまだ日本では、離婚することは、「離婚するなんて子どもがかわいそう」という紋切言葉で語られがちです。ですが、パートナーシップを組むなかで、養育する人たち*1の関係がうまくいかなくなることは、起こりうることです。「離婚はいけない」と思考停止に陥るのではなく、離婚後にどのように子どもを育てるのか、という視点が必要とされるでしょう。これから議論していく課題だと思います。

*1:このフォーラムのタイトルが「<男女>共同子育て」になっていることには、やはり違和感を持ちますが……男女共同参画で予算取るためにつけたのかもしれないですけど、こらあかんと思います。別に男と女が育ててるとは限らないでしょう……