マップヘイターが成功するには

 匿名ダイアリーで「成功する人はこういう人。」というエントリーが盛り上がっている。

福岡伸一著「世界は分けてもわからない」について書きたいと思います。

といっても、科学のことを取り上げるのではなく、今回は本書に出てきたマップラバーとマップヘイターについて、深く掘り下げ成功する人はこういう人へ繋げたいと思います。


本書でこういってます。

おおよそ世の中の人間の性向は、マップラバーとマップヘイターに二分類できる。

マップラバーというのは、本書の例えを使わせて頂くと、百貨店に入ったときにまず案内図を見て全体を把握し、それから、こっからこういって、2階に行ってあの角を曲がってというふうに計画をたててから、目的地に一直線に行動することを言います。つまり、何事にも鳥瞰して考えてから論理的に行動する人のことをいいます。


対して、マップヘイターというのは、案内図など一切見ずに手当たり次第「勘」で行動し目的地まで行動します。つまり、私と前後左右の関係性だけで行動する人のことをいいます。

http://anond.hatelabo.jp/20090925190609

この「マップラバー/マップヘイター」という分類が面白いのは、「好き・嫌い」でカテゴリー分けされていることだ。孫引きなので、福岡さん自身がどう考えているのかはわからないが、「地図の好き・嫌い」と「地図が利用できる・できない」とがわけて考えられるので、良いネーミングなんじゃないかと思う。*1私は、明らかに「マップヘイター」の傾向があって*2、常々、「どうしたらいいもんか」と考えることが多かったので、楽しく読んだ。
 マップラバーとマップヘイターの特徴をもう少し書くと、こんな感じだと思う。知らない街の、ある小学校を探しているとする。マップラバーは、まず地図を見て、「ここに○○山があるな。ここに××公園があるな」と確認する。そのあと辺りを見回して、「あそこのが○○山で、あれが××公園だな」と認識し、小学校のある場所に目測をつけ、進行方向を決める。
 マップヘイターは、まず山を見て、実際に登ってみる。そして「この山には常緑樹が多いな」だの「山小屋があるぞ」だのという情報から、「きっとハイキングコースで人が多く訪れる」などと考えたりする。そして、公園を見つけて、子どもと遊んでいるうちに、子どもを迎えにきた親に「小学校はどこですか?」と聞いて、目的地の場所を知る。目的地に着くころには、マップヘイターはこの街についてかなり詳しくなっている。しかし、マップラバーは、マップヘイターが山に登っている頃には、すでに小学校に着いているだろう。
 マップヘイターは、実際に見たり触れたりする情報から、自分なりの全体像を描くことは得意である。だから、まったく見取り図なしに行動しているわけではない。自分なりの視点を持って、地図を作ることができるのだ。しかし、たいていの問題は効率よく、与えられた地図を使って目的地に行けばよい。これでは、「おつかいに行け」と言われて、「探検に出かける」子どもと同じである。
 未熟なマップヘイターは、単なる要領の悪い人である。そして、それは私のことである。匿名ダイアリーを書いた人は、親切にも「マップヘイターが成長すると、成功する人になる」というようなことを書いてくれている。それを真に受けて、「未熟なマップヘイター」が「成功する人」になる方法を考えてみた。

(1)めげない、卑屈にならない

 匿名ダイアリーの記事の中では、マップヘイターは「どんなものごとにも貪欲に興味を持って取り組む、マイペースな人」のように描かれている。しかし、多くのマップヘイターは、ヘタレなので、そんな不屈の精神で自分を貫いたりできない。
「おれ、めっちゃ努力してるのに、報われない」
たいていこんな風に考えている。世の中には、最初から要領よく物事のノウハウを掴み、成績や業績を上げていく人もいる。そういう人と比べても悲しくなるだけなので、さっさとあきらめる。自己評価も下がりがちで「バカなのかも……」とめげそうになるけど、気にしない。
 第一に、誠実に物事に取り組んでいることは相手に伝わるものである。努力の方向性が頓珍漢であるときに、バカにしてくる相手は、バカなのである。バカの言うことは気にしない。第二に、目をかけてくれる人がいたら、アドバイスには従う。「どうせ……」っていうの禁止。親切にしてくれる人は、マップヘイターを見下しているのではなく、期待しているので手助けしてくれている。侮蔑や人格否定と、取り違えないないように注意する。

(2)自己分析はしない

 自己分析とは、自分の長所短所をマッピングし把握する作業である。マップヘイターは、この作業をやらないほうがよい。自分の勘を頼りに、本質的に自我の探究を始めると、キリがない。世の中で言われている「自己分析」と、「自分探し」は違う。自分なんて探しに出かけたらなかなか帰ってこられない。学生以外はやめたほうが良い。*3もし、就職活動なんかで、自己分析を求められたら、マップラバーらしき人に頼んで分析してもらう。大事なことは、「自己分析シート」を埋めることであり、面接で求められた答えを探す作業である。

(3)後輩を持つ

 マップヘイターは、地図を持つのを嫌う。なぜなら、地図がなくても目的地にたどり着くからだ。自分だけは地図を持たなくても大丈夫だと思いがちだ。しかし、後輩を持つとそうもいかなくなる。胸に手を当てて考えれば、地図を持たずに放浪したため、危険な目にもあってきた。後輩を同じ目に合わせるには忍びない。そこで、後輩のために地図を使って、目的地を説明しなければならない。マップヘイターは、「自分のために」と「他人のために」の区別はさして重要ではないだろう。なぜなら、損得計算が下手で、目の前のことに全力を尽くすのが大好きだからである。マップヘイターは自分のために地図を読む練習をするよりは、他人のために地図を読む練習をするほうが、結果的に効率的である。
 

(4)地図を持つことを恐れない

 この四つ目が一番大事である。匿名ダイアリーの書き手は、「マップラバーの能力を持った、マップヘイターこそが成功できる」という。しかし、マップヘイターにとっては、マップをヘイトすることがアイデンティティになっていることが多い。要領が悪くとも、なんとかここまで自己流でやってきたというプライドと、マップラバーへのコンプレックスで、「おれは地図なんて金輪際使わない」と主張したりする。反転して「地図なんて使うやつは、ものごとの本質をつかみ損ねる」と言ってみたりする。また、地図なんて使うと、自分のよさが失われるような気がすることもある。
 しかし、冷静に考えて、「多くのシチュエーションでは、地図は使ったほうがいい」のである。成長したマップヘイターは、「ここで地図を使うべきか否か」を判断できるようになる。より本質に迫るべき問題に関しては、自分の勘を頼りに進んでいくだろう。そうでない淡々と処理すべき問題では、地図を使って効率的に作業を進めるだろう。たとえ、その結果、マップラバーになったとしても、マップヘイターとして積んできた経験やスキルは失われない。マップヘイターであることは悪いことではないが、地図の有用性を見失わず、必要な能力は身につけるべきである。


 自分や周囲のマップヘイターたちをみていて、こういう風に考えることがある。まあ、言うはやすし、というわけで、今も地図持つのは嫌いなんですが。

*1:しかも、この分類にありがちな男女わけでもなかった!

*2:もちろん、人間が二つにばちっと分類できるわけがない。でも要領のいい・悪いっていうのはあるよね。ついでにいうと、他人から見て、私が「要領のいい人」に見えることも多々あると思う。まあ、心理的にウジウジ考えていること、ということで流し読みしていただければ。

*3:学生は、せっかくのモラトリアムなんだから、自分くらい探しに出かけてもいいんじゃなかろうか