続報・裁判員制度における被害者のプライバシー確保を求める要請

 以下の続報がありましたので、紹介します。(前の記事から独立させます)

 裁判員制度における被害者のプライバシーに関して、現在情報を収集中です。3件の続報があります。

(1)52団体と賛同者848人の署名が届けられました。

毎日新聞の報道です。

裁判員制度:性犯罪被害者の2次被害防止を 女性団体要望

 21日から始まる裁判員制度で、裁判員選任手続きの際に強姦(ごうかん)致死傷事件など性犯罪被害者の情報が、守秘義務のない裁判員候補者に伝わる可能性があるとして、全国の女性団体などは19日、被害者のプライバシー保護を最高裁に要望した。

 裁判所は選任手続きで、候補者らに事件の概要や被告、被害者の名前など個人情報を伝える。被告や被害者と関係があったり、不公平な裁判をする恐れがある候補者は裁判員になれないためだ。しかし、この仕組みでは、被害を知られたくない性犯罪被害者の名前も知られてしまう。このため、アジア女性資料センター(東京)が取りまとめ役となり、52団体と賛同者848人が改善を求めた。

 既に最高裁は、被害者名を出さずに大まかな情報を伝え、思い当たる人物がいるか候補者に尋ねるなどの運用をし、候補者には口外しないよう求めるとしているが、女性たちは「最高裁は各地裁にガイドラインを示して」などと不安を訴えた。

 08年1年間に起訴された対象事件2324件のうち、性犯罪は約2割の468件ある。【銭場裕司】

 毎日新聞 2009年5月19日 20時56分

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090520k0000m040086000c.html

(2)16名により、最高裁に申し入れがありました。

デルタGのミヤマアキラさんが報告しています。

 本日15時より、裁判員選任手続きにおける性暴力被害者のプライバシー確保について、最高裁への申し入れが行なわれた。参加者は16名。約30分という時間制限のなかで、要望書と質問書の提出/受理、担当審査官から現時点で関係部署が応答可能な範囲での被害者情報提供のありかたについての説明が行なわれ、申し入れ側は質問書の補足説明などを行なった。

 申し入れの代表者であるアジア女性資料センターの本山さんは、今回の申し入れの窓口となった秘書課審査官に、裁判員選任手続きにおける性暴力被害者の安全とプライバシーの確保を求める要望書と質問書を提出。審査官は、これらの文書を受理し、関係部署(刑事局)に申し伝えると明言。

 つづいて、審査官より、裁判員選任手続きにおける被害者情報提供に関する担当部署の見解が述べられた。まとめると、被害者特定事項の秘匿性の程度に応じて、個々の事案ごとに望ましい被害者特定情報提供の方法がとられることになるとのことだが、各々の裁判所の判断にまかされるとなると、裁判員制度の導入によって性暴力事件被害者が新たな二次被害にさらされる危険性を充分に配慮した見解であるとはいえず、本山さんらは質問書の内容を補足説明する形で懸念を表した。

 http://www.delta-g.org/news/2009/05/post-277.html#more

 

(3)私(font-da)の記事に「誤解がある」との指摘をいただきました。

以下のトラックバックをいただきました。

 ■誤解です

 http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-372.html

 http://d.hatena.ne.jp/font-da/20090517/1242572366

 裁判員の選任手続で,性犯罪の被害者名を裁判員候補者に伝えることはしません。

なぜなら,被害者の知人が偶然に裁判員候補となることは,確率的にいってごくまれにしか起こらないことだからです。

裁判員6名と場合によっては補充裁判員若干名を選任した段階で,裁判員らに被害者名を伝えます。

その段階で,知人であることが判明すれば,新たに裁判員を選任します。

守秘義務のない多数の裁判員候補者に性犯罪の被害者名が知られる」というのは大変な誤解です。

どうぞご理解ください。

追記:mats3003さん,dekijpさん

万が一,被害者の親族の方などが裁判員に選任された場合には,裁判の公平を欠きかねないことから,裁判員には被害者の氏名を伝えます。裁判員には守秘義務があることは記事の通りです。

http://anond.hatelabo.jp/20090519194354

もし、これが事実であれば、私はこの件に対して誤解がありました。しかし、さすがに匿名のブログに書かれた情報では、判断付きかねますので、現在確認作業をしています。ご迷惑おかけします。

 なお、読売新聞九州版の報道では、以下のようになっています。

 21日に始まる裁判員制度で、強盗強姦など制度の対象となる性犯罪事件を巡り、裁判所が被害者保護と裁判員選任手続きの両立に頭を悩ませている。裁判員は事件と無関係でなければならず、数十人から約100人の候補者に被害者の氏名などを伝えることになる。選任されなかったほとんどの人は、裁判員法が定める守秘義務を負う必要がない。被害の経験者からは「制度が始まると、ますます被害を訴えにくくなる」との声も上がっている。

 性犯罪のうち裁判員制度対象の重大事件は強姦致死傷、強盗強姦、強制わいせつ致死傷、集団強姦致死傷事件。2008年の全国の対象事件2324件のうち約2割を占める。

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090506-OYS1T00229.htm

追記:

新たにわかったことを下の記事で補足します。
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20090520/1242784754

追記2:

続報をミヤマアキラさんがさらにまとめてくださっています。
「【裁判員制度最高裁への申し入れ続報」
http://www.delta-g.org/news/2009/05/post-279.html