痴漢問題を論じるうえで

 一応、私がいつも踏まえておいた方がいいと思う前提を書いておきます。

(1)えん罪

 なぜか「痴漢被害者vs痴漢えん罪被害者」の構図が生まれ、女性が前者を、男性が後者を代表し、それが「女性vs男性」の構図にすり替わっていくことが多いようです。
 痴漢の場合は、関与する当人は「被害者と加害者」です。しかし痴漢えん罪の場合は、「冤罪被害者と司法関係者」です。現在の司法手続きは、えん罪が非常に生まれやすいシステムになっています。とりわけ、代用監獄の問題が指摘されてきました。(http://www.toben.or.jp/news/daikan/q1.html
 えん罪は、「女性が声をあげないようにすること」で防ぐべきではありません。判決が確定するまでは人権を守った手続きをとり、慎重に事実を調べていくことで、防ぐべきです。証言の信頼性を疑ったり、監視カメラという発想をする前に、現行システムの改善で防げる問題はたくさんあります。
 えん罪被害者を代弁するならば、撃つべき敵は、女性ではなく、現行の司法システムでしょう。

(2)男女は違うか?同じか?

 性暴力の問題を扱う上で、ひとまず男女は分けて考えた方がよいでしょう。なぜなら、性的な問題で、男女*1はあまりにも違う扱いを受けるからです。
 女性は性的なことがらでいやな思いをしても、当たり前だと思わされたり、自分が我慢したほうがものごとはうまくいくと思わされるような社会状況があります。そうした女として生きる経験をしたことがある人と、無い人では、個人差以上に行動の取り方や感じ方に違いがあります。
 また、男性は性的なことがらに関して、真剣に話をする機会を持つことが難しいように、私には見えます*2。また、女性以上に、自分が性的にいやな思いをさせられることがある、という情報や、自衛の情報にアクセスしづらい社会状況あります。*3
 そういうわけで、男女を「同じである」とするのは議論上は得策とは思えません。
 そして、こうした話題では、どさくさに紛れて、ホモフォビックな言説を持ち出す人もいるので要注意です。また、女性が男性に対して、性的ないやがらせをすることは、十分にありえます。ただ、上にも書いたように、男女の立場は入れ替え不可能です。

(3)「自分の妻が」「自分の娘が」という仮定

 こうした仮定で、男性が女性被害者の痴漢被害の深刻さを考えることは、アプローチの一つだと思います。糸口としては悪くないと思います。
 しかし、気をつけなくてはならないのは、たとえ「自分の妻」「自分の娘」が被害にあっても、被害者の気持ちを理解できるわけではないことです。性暴力に関しては、むしろ、周囲のわかってあげようとする親密な人こそ、被害者との気持ちの上で断絶されやすいのです。
 また、日本の強姦罪は、もともと「夫が(自分の財産である)妻の貞操を第三者に奪われた」という発想から始まっています。だから、いまだに男性器を女性器に入れることが強姦だと定義されます。そのため、男性被害者がレイプされても加害者は強制わいせつ罪にしか問われません。この定義の問題は、ずっと反性暴力の問題で指摘されてきました。しかし、いまだに改善されていません。
 このような、女性の身体を、男性保護者(夫や父親)のものとするような習俗は、女性差別であることを踏まえなければなりません。パターナリズムを引き起こしやすいからです。そこで、「自分の妻」「自分の娘」という発想には、注意が必要です。

追記

 えん罪を本気で恐れる人は、こちらの連絡先をメモして持ちあるくと、お守り代わりになっていいかも↓
救援連絡センターhttp://kyuen.ld.infoseek.co.jp/

逮捕された時どうするか

 警察に逮捕されたとき、救援連絡センターの弁護士を選任する場合は、取り調べの最初に「弁護士はどうするのか?」と聞かれたら 「救援連絡センターの指定する弁護士を選任する。電話は03-3591-1301(獄入り意味多いというゴロ合わせで覚えてください)。代表弁護士は葉山岳夫(はやまたけお)である」 とだけ言って、あとは雑談にも応じず黙秘をしてください。
http://kyuen.ld.infoseek.co.jp/information/howto.html

警察の弾圧に対抗しているグループです。

*1:一応ここでは、みかけの性別に限定しておきます

*2:周囲の男性やってる友人から聞いただけです。もちろん、「だから、男にはわかんないだよ〜ん」とか言う人は問題外なのですが

*3:二次被害も多いです。具体的にはこういう情報があります→http://www.biwa.ne.jp/~genbu/