草食系男子が少女マンガに現る
「Kiss」の11/25日号を買った。(アマゾンに在庫情報がないみたいです。下は参考用に一月号↓)
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/12/25
- メディア: 雑誌
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「Kiss」は20代から30代の独身女性をターゲットにしたマンガ雑誌である。月に2回発行され、「のだめカンタービレ」「ホタルノヒカリ」など、ドラマになった有名作品も掲載されている。しかし、総じて地味な作品が多く、ドラマティックな展開はほとんどない。私も惰性で、だらだら昼ドラを観るように買い続けている。(そして、昼ドラと同じく、どうでもいいと思っていも見逃すと悔しい)題材も身の回りの人とのかかわりや、職場での葛藤など、日常生活の中の小さなドラマが取り上げられることが多い。
そこで連載されているのが、「30婚〜miso-com〜」である。
- 作者: 米沢りか
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/05/12
- メディア: コミック
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そんなノロエミが恋をしたのが「黒城さん」(男性)である。ノロエミは黒川さんを前にすると、緊張して空回ってしまう。今月のエピソードでは、ノロエミは黒城さんを「スイーツバイキング」に誘う。そのために、頭の中でシナリオを作って、練習してから黒城さんに声をかけた。ところが、そのシナリオ通りの返答を黒城さんがしてくれないため、またもや空回って、結局誘いを断られてしまった。
ノロエミは、男性の友人の「速水さん」をスイーツバイキングに誘う。速水さんは、草食系男子*1で、ノロエミとは恋の相談をお互いにしあう仲である。実は、速水さんも、思いを寄せる女性を誘おうとするのだが、うまくいかずに悩んでいた。速水さんの話を聞き、ノロエミは男性もまた、恋愛について同じように悩んでいることに気づく。
(ノロエミのモノローグ「わたしたち 女性が 傷つくのが こわいように 男の人だって 傷つくのが こわい」)
ノロエミ「……わたしと速水さんって似てるのかも 『自分の作った シナリオから はずれると あわてふためいてしまう』ってところとか」
速水さん「そうかもしれないね」
ノロエミ「傷つくのがこわいから 失敗したくなくて」
速水さん「シナリオを作る」
ノロエミ「そして シナリオからはずれると とてもへこんでしまう 極端な話 わたしは黒城さんに 『たとえ甘いものが好きでなくても 自分につきあってほしい』って思ってた」
(手描き文字で、速水さん「おお〜=それはすごい…」ノロエミ「ね?なにさまって感じだよね」)
ノロエミ「男の人には なんでも願を叶えてほしいと思ってた 『あれしてほしい』『これしてほしい』って 男性に求めてばかり そのくせ男の人に傷つけられるのがこわくて 『勇気を出した結果傷つくこと』も 男性に担当してほしい と思ってる 『男だって女と同じように傷つく』ということがわかってなかったの 男も女もおなじ人間よね ごめんなさい」
速水さん「今まで『おなじ人間』と思ってなかったの?!」
ノロエミ「斬れば血の出おなじ人間 とちゃんとわかっていたかしら……?」
速水さん「……じゃあなんだと思ってたの……?」
ノロエミ「『男の人』という生きものだと思ってた 『男の人』にはいろんな願を叶えてほしい 万能でいてほしい (手描き文字で「うひゃ〜〜はずかしい」) そんな考えじゃ そりゃあ結婚できないのはあたりまえよね〜〜〜!!」
(手描き文字で、速水さん「傷つかず女性の願いは叶える そんな万能のロボットみたいな役割を期待されていたなんて…」ノロエミ「逆に女が男に万能ロボットを期待されたら そりゃあつらいよね なのにすみません」)
ノロエミ「今後『勇気を出した結果傷つくこと』担当は双方折半で」
(手描き文字で、速水さん「ははは」)(155〜158ページ)
そして、ノロエミはシナリオを作らずに、傷つくことも覚悟の上で、黒城さんに恋をすると決める。その結果、黒城さんと今度はうまく話せたのだった。
「草食系男子」に「スイーツ」という、どっかで聞いたことのあるような話がてんこもりのマンガである。
- 作者: 森岡正博
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2008/07/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「草食系男子の恋愛入門」は、男子目線で書いてある本だが、それを女子目線で書き換えたようなエピソードになっていた。女子をターゲットにした作家からの、この本に対する応答の一つになっているかもしれない。女子の男子に対する役割期待は、確かに恋愛する上での、ハードルになっているかも。*2男女の恋愛では、関係性の中で社会的性差にどう対処していくのかは、大切な問題である。「男と女はわかりあえない」というようなオチにはまらず、考えていきたい。ただ、このマンガに関しては、あまりにも自己啓発の要素が強すぎて、説教臭く、どのくらいの読者に受け入れられるのかは疑問である。せっかくマンガなんだから、こういうことは、セリフで言わせるのではなく主人公の変容を描く中で、読者が考えていく形をとれればいいなあ、と思う。*3