橋爪節也「大大阪イメージ――近代都市文化の新しい分析プログラムを求めて」

大大阪イメージ:増殖するマンモス/モダン都市の幻像

大大阪イメージ:増殖するマンモス/モダン都市の幻像

 現代においても、「大阪」は特別な都市である。「東京」と対にして語られる、日本で二番目の大都市という位置をとっていながら、「東京」とは異質な他者として語られる。「こてこて」という形容詞に見られるような、大阪のイメージは、一種のオリエンタリズムであるという批判もある。そのことに対して、橋爪さんは次のように述べる。

 しかし、同時に私は、こうした批判を理解しながらも、大阪に対する意図的な誤解や誤読、過剰なデフォルメさえも呑み込み、それらが織りなす”イメージ”を探る形で逆に炙り出される都市の歴史や本質もあるのではないか、それを模索したいと感じる。磨りガラス越しにぼやけて見える過去の歴史の映像を、ブレたまま素材として引き受け、検証材料とすることで、新しい角度から観た街の歴史や、真実があらわれる可能性はないだろうか?都市自身も積極的に自らの虚像を生み、”イメージ”の発信に荷担してきたのではなかったか?”イメージ”という曖昧なものを扱う本書の解析も、あるいは知的な”火遊び”に終わるかもしれないが、『モンタヌス日本誌』に描かれた大阪風景の謎めいた誤謬の世界のなかを、軽々と帆走するジャンク船の群れを眺めていると、想像力を駆使できる年に関するイメージの領域が広がり、その虚構の産みに身を委ねてみたい誘惑に駆られはじめるのである。
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まだ、序章しか読んでいないが、広告や万博など、いわゆるサブカルチャーにおける表象の分析がふんだんに取り入れられていて、面白そうだ。